激しいおっさん
「・・・こういう訳なんだよ!」
ゲームセンターでの、「ゴリラのぬいぐるみGET」の背景を丁寧に、そして詳しく話してくれたクリス。その目はキラキラと輝いている。
「どうだ!?」
クリスはそのキラキラした目で、○○に感想を求めた。
いや・・・“どうだ!?”って聞かれても・・・突っ込みどころが多すぎる・・・!
しかし、突っ込む前に気になることが○○にはあった。クリスの話の最後の部分を聞くと、“ピアーズと揉めてしまったのではないか?”という印象が強い。その後、一体どうしたのだろうか。クリスは嬉しそうな顔をしている。そのニヤけや表情から判断すれば、仲直りできたということでいいのだろうか。
「ピアーズさんと・・・仲直りできたの?」
「ああ!もちろんだ!聞いてくれ!!!」
クリスは嬉しそうな顔をそのままに話出した。
“俺も取りますよ”のピアーズの言葉の後、ゴリラのぬいぐるみを一人で取ろうとするのを止め、彼と共に奮闘していたクリス。ピアーズの数々の言葉のお蔭か、クリスは徐々に落ち着きを取り戻しつつあった。
ちょっとトイレと言い、少ししてクリスが戻って来ると、ユーフォーキャッチャーのボタン操作をしていたピアーズが勢いよく振り向いた。
「ゴリラのぬいぐるみはいい位置に向かっています!取りましょう!」
ピアーズは意気込むように言うと、再びゲーム台に向き直った。
「ピアーズ」
クリスも同じようにゲーム台の前に立つ。
「お前の言うように・・・俺は目を背けていたのかもしれない」
クリスは自分のすぐ隣で真剣な表情を作るピアーズに顔を向けた。
「“ゴリラのぬいぐるみを3000円以内で取る”っていう目標から・・・」
「隊長・・・」
ピアーズは小銭を入れようとする手を止め、クリスを見つめる。
「もう5200円使っちゃったけど・・・取れるか?」
「取ってみせますよ」
ピアーズは不敵に笑うと勢いよく小銭を入れた。
「―で、6300円かかってそのゴリラのぬいぐるみを取った訳ね」
「そうだ!―いやしかし、俺はいい部下を持ったよな・・・!俺のことだけじゃなく、○○のことまでも心配してくれるなんて・・・いいヤツだよ、ピアーズは」
クリスは照れたように頬を掻く。
「本当だね!よかったね、仲直りできて!・・・・・・ってそうじゃないよっ!!」
何だ何だ!?“あんたが3000円以内で取れると信じて応援してる○○さんが哀れでしょうがないよ!”って!
「私、クリスが3000以内でそのぬいぐるみを取れるなんて信じてないし、応援なんかこれっぽちもしてないよ!?」
第一、クリスがユーフォーキャッチャーやるなんて考えたことないし!!・・・ちょっと待って!“今のその姿・・・○○さんに見せられるかよ”って何だ!?そんな野生のゴリラが大暴れしているようなクリス、見せなくていい!寧ろ見せないで!!!一体何の心配してるの!?ピアーズさん!!・・・・・・それに!
「何でそんなに感動的なシーンになってるの!?言ってることとかやってることが激しすぎて、全然感動的じゃないよね!?」
○○は開いた口が塞がらないと、クリスを見つめる。
「この他にもまだまだ・・・」
言いたいことはたくさんある。でも、たくさんありすぎて・・・言う気が失せた。
ただ一つ。
「激しいおっさん」
[ back to top ]