HARD RAIN
―Snipe Of Love―

「―嫌よ!!誰があんたなんかとっ!!」

 必死に抵抗する2人。しかし、男の顔には薄気味悪い笑みが浮かんでいた。すると、意を決したように1人が立ち上がり、男の前へ出た。

「ちょっと!!いい加減にしてっ!!!あんた、こういう風にでしか女の子と話できないんでしょう!!でも、あんたなんかどんなに頑張ったって無理よ!!だってまず顔が無理!!!エリートだか何だか知らないけど、そんなメガネにスーツ着たってキモかったら意味ないのよ!!!その上、お酒飲んだら絡むって最悪も最悪、最低クソ男よ!!!ゴミよ!カスよ!クズよ!!それ以下だわっ!!!」

 女は捲し立てた。

 その言葉に、男はカッと両目を開いた。そして、自分のテーブルの端にある空になった瓶に手を伸ばす。

 あっ!!!ヤバい!!!!!!

 これは非常にまずい展開だった。

「△△っ!!!台布巾っ!!!」

 ○○は走りながら、△△を呼んで手で合図する。

 △△は少し離れたテーブルで後片付けをしていた。テーブルを拭いていたのだが、異変には気付いていたようで、○○の視線の先にあるテーブルをしっかりと見ていた。

「うんっ!!!わかった!!!」

 △△は今自分が使っていた台布巾の対角部分を瞬時に結んで丸めると、腕を下から大きく素早く一回転させ、○○に向かって思い切り投げる。

 徒ならぬ様子に、店内の客はみんな顔を見合わせる。

 ○○は台布巾をキャッチすると、素早く結びを解く。そしてその角から少し中に入った部分を親指と人差し指の間に挟むと、反対側の角を持って一周させる。約25センチメートル四方の台布巾、その対角線の長さは、拳を作った時に出っ張る中手骨の骨頭部を包むのに、十分な長さだった。

 ○○は男の前で立ち尽くす女の腕を引いた。

「早く!外に!!!」

「でも・・・!」

 振り下ろされようとする瓶。
 
 女は椅子に座ったまま動けなくなっている連れに眼を戻す。

「大丈夫です!!今助けますから!!だから早く!!」

 ○○は女をドアの方へ促すと、もう1人と男の間に割って入った。

「目、閉じて下さい!!顔あっち!!」

 顔を男の方ではなく反対の方へ向けるようにと指示をする。

「え?」

「いいから!早く!!」

「え、あ・・・きゃぁぁぁぁっ!!」

 悲鳴と同時に瓶が勢いよく振り下ろされる。

 女は頭を抱え、○○の指示通りの方向へ顔を背けた。

「そのまま!!」

 ○○は女に左手を翳すようにして動くのを制止しつつ、背中で守るようにして半身になる。そして、脇の下に構えた右手の拳を、振り下ろされた瓶目がけて高く突き上げた。


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