―Snipe Of Love―
「んん?」
○○が若干の空気の異変に気付いたのは、夜空が雲で覆われてから雨が降り始めて間もなくの時だった。店の奥、受付の2人が居る方だった。
○○がそちらへと向かえば、少し前に自分が呼ばれた時とは打って変わった光景が視界に飛び込んできた。
え・・・!?
受付の2人と隣のテーブルの男で仲良く話していたのではないのか。
「ちょ、ちょっと・・・!!」
受付の1人が困惑の声を上げている。3人の間でどのような会話がされているのかはわからないが、まともでない雰囲気というのはすぐにわかる。
酒の注がれたグラスに口を付けながら、顔を真っ赤にして受付の1人に迫り絡む男。すぐ隣からその身を乗り出し、女との距離を詰めるかのように迫ろうとしている。
酒乱か・・・!?
こういう場合は店長であるおじさんとおばさんが対応するのが一番だ。今までもずっとそうだった。しかし、その2人は今日と明日は居ない。休暇をとり、出かけているのだ。そうともなれば、ここは男の店員に対応してもらうのがいいだろう。酒に酔った男に女が対応するのは危険極まりない。自分がそう考えるだけでなく、おじさんとおばさんにも言われていたことだった。
○○は店内をぐるりと見渡した。しかし、どうしてだか今日は男の店員が見当たらない。
「あっ!!そうだっ!!ねぇ、マイクは!?」
○○は急に閃いたように、近くに居た店員に近づいた。マイクの存在をすっかり忘れていたのだ。
「え?マイク?マイクなら出かけてるけど・・・」
「え、出かけてる?」
「うん。トイレの電球が切れちゃったんだって。そんでもって、買い置きがなかったんだってさ」
「え・・・」
困ったような顔をする○○に、店員は「この間付け替えたばっかりなのにね〜」と付け足した。そして続ける。
「でも○○、そんな顔してどうしたの?」
「あ、いや、実は―」
○○が言いかけたその時、抵抗の声が聞こえてきた。
「嫌っ!!止めてっ!!」
その声は切羽詰まっている。
「ごめん!後で話す!!」
○○は仲間との話を強制終了させると、受付の2人の元へと急ぐ。
何でこんな日に限って・・・。
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