―Snipe Of Love―
―ねぇ、あの時の聴いた?
―聴いた聴いた!『デキる女』だって!!
―あの娘たち、飲み屋の娘でしょ!?ムリムリ!!オフィスワークなんて!!
―困るよねぇ!スーツ着ただけで“BSAAの事務職員”だなんて言われちゃ!
―大体さぁ、あんな飲み屋で働いてる娘とBSAAじゃ、住む世界が違うし身分が違うんだって!
―ホントホント!あっ、ねぇ!今度あの娘たちのお店に行ってみようよ!
―いいねぇ、それ!!いったいどんな仕事してるんだか!
このような会話をして○○と△△のことを笑っていた本人たちがSTANDING ALONEにやって来たのは、BSAA見学から一週間程経った夜のことだった。
「いらっしゃいま・・・!!」
店のドアに付いているベルが揺れたので、そちらに顔を向けた○○だったが、やって来たのがBSAAの受付の女性たちだとわかると、どことなくその表情は曇っていった。しかし、彼女たちが言っていた言葉をいつまでも考えて気になどしていられない。“いったいどんな仕事してるんだか!”と言うのなら、その仕事っぷりをたっぷり見ていけばいいと、○○は寧ろ挑むような心持で近づいた。
「いらっしゃいませ!!あの、BSAA受付の方でいらっしゃいますよね?先日はお世話になりました」
「いいえ。こちらこそ、見学に来て頂いてありがとうございました。」
笑顔を見せる○○に、受付の女性たちも笑顔で返す。さすがは受付嬢というところか。
「こちらのお店にいらっしゃるとお聞きしたものですから、伺ってみたくて・・・」
この店に居ることを、いったい誰から聞いたのか。
○○は心の中で苦笑する。
「本当ですか!?どうもありがとうございます!ご案内致します。こちらへどうぞ」
○○は微笑み、片手で示しながら、テーブルへと案内する。いつものテーブルに居るピアーズたちには、何となくこの受付の女性たちと接しているところを見られたくなくて、できるだけ彼らから遠いテーブル、奥の方のテーブルへと案内する。
案内の途中で△△が気付き、軽く会釈をする。受付の女性たちもまた笑顔を作って会釈を返した。
「ご注文が決まりましたら、お呼び下さい。ごゆっくりどうぞ」
彼女たちから離れ、カウンターの裏に戻ると、待っていた△△が口を開く。
「本当に来たんだねぇ・・・」
「ね。来ちゃったよ・・・」
○○はわざと眉を上げると、歯を見せて息を吐き出した。
いつの間にか夜空には雲が広がり始めていた。
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