―Snipe Of Love―
○○とピアーズは、他の階や食堂やの見学を終えて射撃場に向かっていた。
「あ、そう言えば、二ヴァンスさんてスーツ着るんですね」
今日ピアーズがスーツで現れてから言おう言おうと思っていた、○○の何気ない言葉だった。
「お店に来る時は私服・・・ってあれ?あれって私服なのか・・・ええと、スーツって見たことなかったから・・・」
○○は大抵いつもピアーズが着ているジャケットを頭の中に描く。オリーブドラブやダークグリーンと言ったミリタリー調の色をしたジャケットである。そのジャケットは立ち襟で、肩章とBSAAのワッペンが付いていた。
「あ、でも、BSAAってワッペンが付いてるんだから私服ではないのか・・・」
そんな○○にピアーズは答えた。
「ん〜、あのジャケットに関して言うと・・・私服じゃないかな。あんたの言うようにワッペン付いてるしな」
ピアーズは続ける。
「俺だってスーツは着るよ。あんたの店に行くような、ああいう恰好で仕事をする時もあれば、スーツの時もあるんだぜ。どうせ、訓練の時には着替えるからな。」
「そうなんですか。あ、BSAAって制服はあるんですか?」
○○は「軍服みたいな感じの・・・階級章とかが付いてる・・・」と付け足しながら、階級章が付く部分である襟や肩や袖口に、実際に階級章があるその上をなぞるかのように手を動かした。
「う〜ん、軍服とは違うけど、似たような感じの制服と帽子があるな。でも、式典の時とか公の場に立つ時の礼装としてしか着ないから、殆ど着ないな。普段は何を着てもいいことになってるしな」
「へぇ〜、そうだったんですか」
そう言いながら、再びスーツ姿のピアーズに眼を向ける○○。
「なぁ・・・」
ピアーズは○○に笑いかけた。
「そんなに俺のスーツ姿が気に入ったなら、今度はスーツで行こうか?」
「どっちでもいいですよ。仕事の後ですから、楽な方で」
2人とも同時に笑った。
そんなことを話しているうちに、射撃場の入口が見える。
「二ヴァンスさん!私、二ヴァンさんが銃を撃つところ、見てみたいです!!」
「おっ!いいぜ?」
入口を開け○○を中へと促しながら、ピアーズがゆっくりと○○を見つめる。
「あんたは?撃ってみる?」
ピアーズは「もちろん俺がすぐ傍で支えるけど」と付け足した。
「あ、じゃあ―ちょっとだけ」
「オーケー・・・じゃあ、ちょっと面倒だけどこれに着替えてくれ。あっちの部屋、使っていいから」
ピアーズはすぐ傍に並ぶロッカーから訓練着を出して渡すと、○○の後方に見える小部屋を指さす。そして、入ったばかりのドアから顔を廊下に出すと、『見学中につき貸きり』と書かれたボードをドアノブにかける。
「じゃあ、俺も着替えてくるから」
ピアーズは○○とは反対の部屋の方へ向かった。
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