BSAA見学(前編)
―Snipe Of Love―

 いくつかオフィス内の部屋を回りアルファチームの階に来ると、○○が不思議そうにある部屋を見つめた。その部屋のドアには「仮眠室」と書かれている。隣の部屋には「男子更衣室」とある。

「あの、二ヴァンスさん!仮眠室ってどこの階にもあるんですか?」

「ん?」

 仮眠室のことなど気にもしなかったピアーズは、通り過ぎた分の歩数を戻すと○○から「仮眠室」へと視線を移した。

「あぁ、全部の階にあるよ。入口のドアは別々だけど、中で更衣室と繋がってるんだ。ここが男子更衣室だろ?あっちに女子更衣室があるから、1つの階に2つずつあるな」

 ピアーズは手で現在地や更衣室の位置を示す。それを見て、○○は楽しそうに笑った。

「更衣室と仮眠室の両方がすぐ使えるように中で繋がってるんだ。でもホラ・・・どっちか片方だけ使うヤツも居るから、ドアは2つあるんだよな」

「へぇ〜そうなんですか〜!私、どこか決められた階に仮眠室があるんだと思ってました!更衣室とは別に!」

 ○○はそう言うと、眼をキラキラさせながらピアーズに顔を向ける。

「二ヴァンスさん!中でどんな風に繋がってるのか見てみたいです!!」

 わっ・・・!かわいいなコイツ・・・!!

「いいぜ!見てみる―」

 無邪気なお願いに快く返事をしかけたピアーズだが、ドアノブに手を掛けようとしてその手をぴたりと止めた。

 待てよ・・・マズイよな、こりゃ・・・。

 幾ら見学と言えどもここは男性専用の更衣室と仮眠室。仮眠室から入ればいいかもしれないが、やはりマズイ。

 でも・・・女専用はもっとダメだしな・・・というかダメだろ絶対・・・。

 自分が女性専用の部屋に入ることは絶対に許されない。仮に扉を開けて○○だけを行かせ、自分は外で待つ・・・それも無責任でダメだ。そうなると、やはり目の前にある仮男性用眠室しかない。

「あんた・・・ここは男専用の部屋だからちょっとだけだぞ!素早くな!」

 ピアーズは“男”の部分に力を入れて言葉を発すると、勢いよくドアノブを回した。

「・・・わ〜っ!」

 電気を点けて明るくなった仮眠室に、○○は興味津々な眼差しを向ける。船の船室のように並べられたベッドを見ては驚きの声を上げ、驚きの声を上げては備え付けられた物に触れている。

 そんな○○の姿を、ピアーズは開いたままにさせたドアに寄り掛かりながら見守る。

 あぁ・・・ったく、ホントかわいいよな・・・。

「あっ!ここで更衣室と繋がってるんだ!・・・二ヴァンスさ〜ん!ここで繋がってるんですね〜!!」

 何かを理解したような嬉しそうな声が聞こえたかと思えば、今度は自分を呼ぶ声が聞こえる。

「二ヴァンスさ〜ん!!」

 呼んでもらっても、俺はもうどうやって繋がってるか知ってるんだけどな。かわいいヤツめ・・・!

 仮眠室と更衣室の繋がる部分から、ひょっこりと顔を出して手招きする○○。ピアーズはドアが閉じないことをもう一度確認してから、○○の方へ足を向けた。

「ほら、あんた。もうそろそろ行くぞ。いつまでも仮眠室(ここ)に居ると、誰に何を言われるかわかったもんじゃないからな」

 ピアーズは開けたままのドアを見つめた。男性専用の部屋にいつまでも居るのはよくないだろう。

「あぁ、そうですよね!じゃあ、そろそろ出ますね」

「おう」

 そう言って2人でドアの方へ足を向けた時だった。

「うわっ!」

 短い悲鳴と共に、何かある程度の重さのある物が床に思い切り置かれる音。

 ピアーズがその音のした方に顔を向ければ、なんと○○が床に倒れていた。傍には見覚えのある物が・・・。

 マルコのティーシャツ・・・!!

「あ、あんた!大丈夫か!?マルコのティーシャツなんか踏んで転けるなよ!!」

 ピアーズはマルコのティーシャツを拾い上げ適当な置き机に放り投げると、○○に向かって手を差し出した。

「痛たた・・・す、すみません、二ヴァンスさん」

 転んでしまった恥ずかしさと間抜けさで、笑いを浮かべる○○。ピアーズの出した手をゆっくりと握った。

 自然に見つめ合う2人。ピアーズは自分の心臓がドクンと脈打つのを感じた。目の前に居る好きな娘を自分の腕の中へ引き寄せるのは、いとも簡単なことだった。そして、ピアーズの眼に留まるのは小さくてかわいい○○の唇。

 ドアは相変わらず仕事をきちんと熟し開いたままだが、2人の居る位置はそのドアから見えない位置である。

 刹那―

ピアーズは○○の手を握ると、もの凄い勢いで引き寄せた。すっぽりと、ピアーズの腕の中に納まる○○。

「二ヴァンスさ―」

 ○○のピアーズを呼ぼうとする唇は、ピアーズの唇によって塞がれた。




 やがて、ゆっくりと離れていくピアーズの唇。

「ほ、ほらっ!!行くぞっ!!!」

 ピアーズは照れるのを隠すように顔を背けると足早にドアに向かおうとする。そのまま自分の後ろへと顔を向けたその時だった。

「・・・アルファチームの二ヴァンス・・・お前、今・・・勤務中にいったい何をしていた・・・?」

 BSAAの、かなり上の位の役職についた人間が2人居た。


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