―Snipe Of Love―
「ご注文は以上でよろしいでしょうか?」
○○はピアーズの居るテーブルで注文をとっていた。注文された物を確かめ、目の前に居るピアーズと彼の仲間たちに顔を向ける。
「おう!大丈夫だぜ!」
「よろしくお願いします、○○さん」
マルコとフィンの元気な返事と、こちらを向いて静かに微笑みつつ首を縦に振るベンを見て、○○はにっこりと笑った。
しかし、気になるのが手前に座っているピアーズである。どういう訳か、随分前から顔を合わせようとしないのだ。確か、彼らが店に来るようになって、気が付いたらこんな風になっていた。
ま、いいや。注文は間違ってないし・・・。
いくら互いが顔見知りだからと言っても、やはりプライベートという物は存在する。○○は、ピアーズはあまり干渉されたくない、店員と話をするのは気が進まないのだろうと思い、その場を放れた。
あれ・・・っ!?
厨房の店員に注文された料理を伝えようとした時のことだった。○○は足を止めて店内を見渡す。どのくらい前からだっただろうか、詳しくは覚えていない。しかし○○は、誰かからの視線を以前から感じていた。
何なんだろう、この視線・・・。
熱いような、鋭いような視線を○○は全身で感じていた。
その視線の元を探るように、○○はゆっくりと首を動かす。店内の端から端までを辿り、自分の後方にある厨房へと目を向ける。
「どうした?」
○○が体を厨房へ向けた時だった。2歳年上の先輩であるマイクが盆を片手にやって来た。
「マイク・・・!!」
目の前まで来た彼に顔を向けた○○。しかし○○の眼は、視線の元を突き止めようとして、彼によって狭くなった視界の中でも行ったり来たりしていた。
いったい誰が・・・。
再び客の方へ向く○○の眼。先程より強くなったような視線を感じていた。
「おい、○○」
自分を呼ぶマイクの声。その声にはっとして我に返った。
「・・・!・・・あっ、ごめん・・・!」
「何かあったのか?」
マイクは心配そうとも怪訝そうともとれる表情を作っていた。
「『何か』って・・・」
「随分前から視線を感じる」なんて言っていいのか迷う○○。もしかしたら、客が店員である自分を呼ぶためにこちらに向けていた視線かもしれない。現に、注文をとる△△が見えて、視線も感じなくなっていた。
「ごめん、何でもないよ」
自意識過剰なのかもしれない。○○はそう思い、大丈夫だとマイクに笑いかけた。
仕事が終わり、○○は自宅のマンションへと帰ってきた。今日は閉店までの勤務だったため、時間は12時半を過ぎている。
あの視線は、いったいいつからだっただろうか。そして、誰の物なのだろうか。ピアーズがああして顔を合わせなくなったのはいつからだったか。そんなことばかりを考えていた。しかし元々、○○はピアーズと親しい会話をしていた訳ではない。彼のことをよく知っている訳でもない。マルコたちが自分と話すようには、彼は話さない。ただそれだけ。
「う〜ん。無口なのかなぁ?」
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