―Snipe Of Love―
「ふ〜んふふんふ〜ん、ふぅ〜ん、ハァーッ!!」
日曜日、間もなく11時を迎えようとする時刻にピアーズは台所に居た。棚からフライパンを取り出し、“ハァーッ!!”と言う掛け声と同時にフライパンを天高く突き上げる。
すぐ傍には卵が5つ。何やら料理でも始めるのではないかという雰囲気のピアーズ。彼は手に持ったフライパンをコンロの上に置くと、卵へと手を伸ばした。しかし、伸ばした手を急に折り曲げ、自分の顔へと近付ける。
ん・・・・。
眼を閉じ、自分の蟀谷にそっと触れるピアーズ。幾日か前に○○がそうしたように、自分の指先でゆっくりと傷をなぞった。
男の指先では痺れるような感覚は生まれない。あの感覚は、きっと彼女が触れたから生まれた物なのだろう。それはピアーズにもわかっていた。
しかし、あの痺れと感覚や、触れられる度に感じたほんの少しの鈍い痛みは、しっかりと身体が記憶していた。そして、それと同時に湧き起こった、何とも形容し難い甘い感覚も。
傷口が乾いて瘡蓋ができても、あの時感じた感覚は乾くことはなかった。
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