甘酸っぱくも心地よい感覚
―Snipe Of Love―

「は〜い。ただ今伺いま〜す!」

 いつものように笑顔で店内を進む○○。あるテーブルの横を通った時、こげ茶色の一つに束ねた髪が微かに揺れた。

 ふわりと漂うその髪の香りに、ピアーズはメニューのお酒、『― Snipe Of Love ―』の文字から○○へと視線を移す。軽くメニューを持ち上げて口元を隠し、何やら考えている様子で彼女の後ろ姿を見つめた。

「・・・ぐふふ・・・」

 しかし、ピアーズの鋭い眼も、すぐにニタニタしたものへと変わる。

「ぐふふふふふ」

 我慢しても漏れてしまう、彼の嬉しげな声。遂にはメニューで顔全体を隠し、肩を震わせた。そこには、何秒か前から緩みっぱなしのピアーズの顔がある。

「ピ、ピアーズ・・・お前・・・だ、大丈夫か・・・?」

 頬を赤く染める、あまりに酷いピアーズに、同じテーブルに居る仲間の誰もが心配の眼差しを向けている。

 ピアーズは、先日、○○に携帯の番号とアドレスを教えてもらったことが、嬉しくてたまらないのだ。

「はっはぁ〜ん。どうせ○○ちゃんだろ、ピアーズ」

「ちっ、違ぇよっ!!!!!!」

 マルコの言葉を全力で否定するピアーズ。しかし、「違う」という言葉とは反対に、彼の顔には「はい、そうです!」と言いたげな表情がはっきりと浮かんでいた。

「何だよ〜!言えよ〜、ピアーズ!!○○さんとどんないいことがあったんだよ?」

 マルコに続き、ベンがピアーズに笑いかける。

「何でもねぇよ」

 そうは言っても、先程よりもニタニタが増したピアーズ。

「ぐふふ」

 ピアーズは、いつものスナイパーからは想像もできない程の顔をしていた。


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