―Snipe Of Love―
コンビニに寄った後、ピアーズのマンションの近くで車を停めると、○○は彼に顔を向けた。
「二ヴァンスさん・・・昨日は傘、どうもありがとうございました!」
苦笑と申し訳なさが入り混じった○○の顔。
「それから・・・ごめんなさい。・・・風邪、引かせちゃって・・・」
「・・・そんなんじゃないって、さっき言っただろ?あんたが謝る必要は、これっぽっちもねぇよ」
ピアーズは○○を見つめ、優しく微笑んだ。
「送ってくれて、サンキューな!」
車のドアを開け、ゆっくりと外に出るピアーズ。開けた助手席の窓から顔を覗かせた。そして、少し言葉を交わした後、彼は静かに背を向けた。
車のバックミラーに映る彼。肉眼で見ても、どうやって見ても小さくなるピアーズの背中に、○○は何とも言いようのない感情を覚えた。
○○には、どうしても訊きたいことがあった。
「二ヴァンスさんっ!!!」
勢いよくドアを開けた○○。先程寄ったコンビニの袋を引っ掴むと、ピアーズの元へと急いだ。
「二ヴァンスさんっ!!私のために・・・風邪なんか引かないで下さい!!」
○○はコンビニの袋をピアーズに押し付ける。袋の中には、風邪薬とスポーツドリンク、そして、小さなカードが入っていた。
「それからっ・・・」
○○はピアーズの眼をしっかりと見つめた。
「・・・私にも・・・教えてくれますか・・・?」
桜を見に行った時の言葉を彼は覚えているだろうか。『教えてくれないか?あんたのこと』という言葉を。
「・・・二ヴァンスさんのこと・・・」
そして、どうしても訊きたかった。少し前までの、あの視線は何だったのか。どうして“普通に接してくれ!”なんて言ったのか。どうして、わざわざ傘なんか買ってきてくれたのか。そしてどうして―どうして毎回、仕事が終わるまで待っていてくれるのか。
どうして、そこまでしてくれるのか。
これらのことは、彼を知るうちにわかるものなのだろうか。
「教えて下さい、二ヴァンスさんのこと」
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