5月の雨
―Snipe Of Love―

 11時に仲間と店を出たピアーズは、土砂降りの雨の中、コンビニへと向かっていた。

「こんなに土砂降りになるなんてな・・・!」

 BSAAオフィスの駐車場に車を停めて、歩いて店に来たピアーズ。自分がオフィスを出る時は雨の気配など少しも感じられなかった空。そのあまりの変わりぶりに顔をしかめている。

 なぜピアーズがコンビニに向かっているのか・・・、それは、○○に傘を渡すためである。

 アイツ、こんな雨じゃ風邪引くぜ・・・!

 ピアーズは少し前の○○の様子を思い出していた。窓の外を見つめながら心配そうな表情を浮かべる彼女。これはきっと、傘を忘れたに違いない!ピアーズはそう思った。

 コンビニに着くと、入ってすぐの所にあるビニール傘コーナーから一本取り、ドリンクコーナーへと移動する。ピアーズは、缶コーヒーに伸ばした手をホットレモネードのボトルへとずらした。

 アイツ、冷え症なんだよな。コーヒーも・・・胃を荒すしな・・・。

 5月に入ってすぐの雨。下がる気温に冷たい雨。冷え症の○○はきっとまた寒がるだろう。手足だけではなく、身体、特に腹なんかが冷えてしまったらマズイ!温かいコーヒーなら身体を温める役割でいいかもしれない。しかし、コーヒーは成分が強いので胃を荒すことも多い。ピアーズが今までに○○に渡した缶コーヒーの数はそれ程多くはないのだが、もしも何かのきっかけで強い成分が働いてしまったら?○○は腹が冷えただけでなく胃も荒して腹痛になるかもしれない。そして、もしも何かのきっかけで、今まで○○が飲んだコーヒーのカフェインと、これから飲むコーヒーのカフェインが作用して強力になってしまったら?○○は風呂に入っても眠れずに、再び身体を冷やすことになり、風邪を引いてしまうだろう。

 ホットレモネードなら腹に優しいだろうと、ピアーズはそのボトルを手に取り、意気揚々とレジへ向かう。

 ピアーズの頭の中では、仲良く1つの傘に入る自分と○○が再生されていた。はっきり言って、こういうことも手を繋ぐのも人前では恥ずかしいもの。しかし、人の居ない場所だとか、夜ならば、そういったこともしてみたいと思ったりしていた。

 相合傘かぁ・・・。

 自然と口元が緩むピアーズ。しかし、ピアーズは肝心なことを忘れている。○○は閉店まで仕事の日は、車で出勤しているということを。そして今日は、○○は閉店まで仕事である。つまり、どんなに頑張ろうと、どんなに土砂降りになろうと、ピアーズが頭の中で描いている相合傘などできっこないのだ。

 やばい!緊張するな・・・っ!!

「とぅっ!!」

 ピアーズは嬉しそうに、買ったビニール傘を開くと、それを振り回しながら年甲斐もなくスキップして、再び土砂降りの中を進んで行った。


[ back to top ]

- 2 -

[*前] | [次#]
[ Main ]
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -