あんたが嫌がったり怖がったりすることを俺は絶対にしないから
―Snipe Of Love―

「えっ!?○○、これからデートなの!?しかもピアーズさんと!?」

「違うよ〜!」

 カウンターの裏に居る○○と△△。2人してカップとソーサーを拭きながら、話題はこの後の○○の予定で盛り上がっている。

 別にデートなんかではない。ただ『行きたい所があるんだ』と、クリーニング代の代わりに付き合えと言われただけである。

「いいな〜!!私もクリスさんとデートしたいな〜!!!」

 しかし△△はどうしても○○とピアーズをデートさせたいらしい。先程から「デート」、「デート」と自分のことのように楽しそうにしていて、遂には「クリスとデート」という自分の願望まで語り始めた。

「デート、どこ行くの?」

「聞いてないんだよね〜。ってか、デートじゃないってば!」

 デートではない。しかし、この後一緒に出掛けるのは事実だ。どこへ行くのかは気になるに決まっている。

 クリーニング代の代わりだからなぁ・・・あっ!もしかして・・・BSAAオフィスの掃除当番とかで、トイレ掃除とかさせられるんじゃ・・・!?

 ○○の頭の中では、ピアーズにトイレ掃除をさせられる自分の姿が浮かんでいた。

―ほら!もっと隅まで綺麗に磨けよ!デッキブラシしたら、雑巾で乾拭きな!

 はぁ・・・これならクリーニング代の代わりになるわな・・・。

 ○○が“トイレでピアーズに扱かれる図”を想像していると、△△が自分を呼ぶ声がした。見れば、何やらにんまりと笑い、至極楽しそうである。

「○○・・・夜のデートなんだからさぁ・・・」

 布巾を置いた△△が両手を伸ばしながらゆっくりと近付いて来る。

「もしかして、こんなこともある・・・かもよ?」

「何?『こんなこと』って・・・」

 △△は親友だ。そうともなれば、今彼女が言う『こんなこと』とは大体予想がつく。それに第一、そんな風にわざとらしく両手を伸ばして来られたら、誰だって予想できる。「押し倒される」ってことを。しかし○○は敢えて聞いてみた。

 △△の手が○○の両肩を勢いよく掴んだ。そして、○○の体を作業台へと倒す。

「押し倒されたらどうする〜っ!?」

「ないね!絶対!!」

 予想は当たった。しかし「ない」と即答する○○。

「そしてそのまま・・・!!あ〜いいな〜!!○○っ!!私もクリスさんに押し倒されたい〜っ!!!」

 ○○から放れ、自分の頬に両手を当てながらクネクネする△△。ちらちらと○○を見てはニヤニヤしている。

「逆に△△がクリスさんを押し倒せばいいじゃん!ゴリ押しでさ!」

 こんな感じで話していれば、時計の針は進み・・・。

「ほら!○○!時間だよ!ピアーズさんとの『デート』のっ!!」

「あ、本当だ!じゃあ、二ヴァンスさんとの?『デート』?に行ってくるね!!」

 『デート』部分を強調して言う△△の冗談に、○○も冗談で返す。そして2人して笑い合った。


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