普通に接してくれ!
―Snipe Of Love―

「おい!あんた!」

 ○○はぴたりと足を止めると、ゆっくりとその声の方に振り向いた。今この場所には、自分と声を発した人物しか居ない。ということは、「あんた」とは自分以外には居ないのだ。

 店の裏口を出てすぐの所にある外灯に、誰かが腕組みをしながら寄り掛かっている。

 ゆっくりと近付けば、外灯の灯りによってその顔がはっきりと映し出された。

「二ヴァンスさん!?」

 意外なところで現れた人物ピアーズに、○○は目を丸くする。

「こんな時間にどうしたんですか!?もしかして、忘れ物でも・・・!?」

 閉店したので、表の出入口は閉まっているのだ。忘れ物ならば、自分が裏口から店に入るしかない。

「違う」

 端的で低く静かなピアーズの声。

 ○○は裏口へ向けた眼を彼へと戻した。

 やっぱり怒られるのだろうか。○○は今までのピアーズの視線を思い出した。彼の視線だけではなく、自分に向けられたよくわからない笑顔やウインクも、そして、出会い頭にぶつかったことも全て。忘れ物でなければ、やはりピアーズは自分を怒りに来たとしか思えなかった。

 こんな時間にピアーズは怒りに来たのだ。店が開いている時間では、他の人の手前、怒りにくいのだろう。人気のないこの時間に、この駐車場でなら気の済むまで怒り罵倒できるという訳だ。

 外灯に寄り掛かった体を起こし、ゆっくりと近付いて来るピアーズに、○○は思わず後ずさった。


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