―Snipe Of Love―
今日の仕事は閉店の12時まで。その仕事を終えた○○は、う〜んと伸びをする。
「それじゃあ、おじさん、おばさん、お先に失礼しま〜す!お疲れ様でした〜!」
○○は店のマスター二人にいつものように挨拶をした。
この店のマスター二人は夫婦である。しかし、親しみを込めて呼んでもらいたいということから、「おじさん」、「おばさん」と呼ばれていた。
「お疲れ、○○ちゃん!気を付けて帰ってな」
閉店後の売上管理や金銭に関する管理は全てマスター夫婦が行っている。おじさんの言葉に元気よく頷くと、○○は店の裏口を静かに出た。
あ〜、もう12時半か・・・。
○○はカバンから車の鍵を取り出しながら、店の敷地を表す白線を見つめた。
店の敷地を表す白線・・・これは、○○が泣きそうになった時に絶対に越えなくてはいけない線だ。それは、泣きそうになったら店の敷地内から出るということ。つまり、店の敷地内では絶対に泣かないということ。仕事をしていて泣きたくなる時もある、仕事に関することではなくても泣きたくなる時はある。しかし何にせよ、店の敷地内では泣かないと、○○は決めていた。まあ、人前で泣くのは嫌だから、わざわざ白線を出なくても泣く場所は限られているのだが。
○○は視線を元に戻すと、車の方へと歩き出す。
いつもと変わらない、店の裏の駐車場。今日もそのはずだった。
「おい!あんた!」
でも、それは違った。
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