そのチャンスを、俺の怖い顔が減らしているのか?
―Snipe Of Love―

 ピアーズがフィンに気の抜けたような顔の作り方の教えを受けている中、彼らのテーブルに近付く男が居た。

「ちょっといいか?」

 その男はツカツカとやって来て、マルコとフィンが座っている片側2人掛けの椅子に無理やり腰をおろした。

「ぐえっ!」

 2人掛けの椅子に3人目が入り、押しつぶされたマルコとフィンは蛙がつぶれたような声を上げる。

 ピアーズの真正面に位置した男は静かに口を開いた。

「俺はセバスチャン!何日か前に聞いたんだ。あんたたちの会話を・・・。そう、あんだた。ピアーズってヤツがあの店員を好きだって・・・!」

 『セバスチャン』と名乗った男はぐるりと目だけを動かしてマルコたちを見ると、テーブルに身を乗り出すようにしてピアーズをじっと見つめた。

 金色の短髪に青い目。ぐっと細められた眼がピアーズの眼だけに向いている。

 ピアーズは突然現れた目の前の男に、眉を寄せ訝しげな表情を作った。

「なぁ、ピアーズさん、俺と勝負しろよ!・・・俺としてはライバルの出現に黙っちゃいられない・・・!!」

「・・・そんなんじゃねぇよ。好きなんじゃない」

 勝負するにせよしないにせよ、ピアーズは負ける気などない。しかし、突然現れた男に自分の本心を明かす気などなかった。

「そうかよ?じゃあ、俺の邪魔はしないでくれよな。・・・この意味、わかるだろ?」

 セバスチャンはそう言うと、カウンターへと足を向けた。


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