そのチャンスを、俺の怖い顔が減らしているのか?
―Snipe Of Love―

 週3ペースで仲間とSTANDING ALONEに行くのはもうピアーズの日課。そして、大好きな○○と口を利きたい、仲良くなりたいと、彼女を見つめるのはピアーズの願望。しかし、眼が合うだけで緊張して眼を逸らしてしまうから、どうしたらいいかと考えているうちに、もの凄い熱い眼差しで○○を見つめてしまうのは、恋する男ピアーズの熱い想い。

 いつものテーブルでいつものように、○○にこれでもかという程熱い視線を送るピアーズ。

 う〜ん・・・このままじゃまずいよな・・・。

 ピアーズは悶々としていた。どうやったら○○と口を利けるか。どうやったら仲良くなれるか。そんなことをあれこれと考えているうちに、ピアーズの顔はどんどん険しくなっていく。

「なあ、ピアーズ」

 ○○を見続けるピアーズに、マルコが声を掛ける。

「ん?何だ?」

 顔を○○に向けたままのピアーズは、声だけでマルコに返す。

「顔が怖いんじゃないか?そんな顔で見つめたって、『好き』って気持ちは伝わらないぜ!?」

「なっ!!」

 バッと顔をマルコを向け、顔を赤くするピアーズ。『そんなんじゃねぇって言ってんだろ』とムキになりながらも、内心、そりゃマズイなと思い両手で顔をバシバシと叩く。

 そんなに怖い顔してるのか?俺・・・!?

 ピアーズは両手で頬を抑えたまま、どうしたものかと悩み出す。○○を見つめる自分の心は真剣だ。それ故、笑っていないのかもしれないが・・・。しかし、怖い顔をするつもりなど全くない。いや、なぜ好きな娘に怖い顔などしなければならないのか。

 でもよ、ずっとニタニタして見るのも変だろう・・・。いや、気持ち悪いだろう、それは・・・。

 少しでも口を利ければ、楽しく笑って話せるのかもしれない。しかし、その「口を利く」がなかなかできないのだ。

 ―あっちっち!

 悩む最中カウンターの隅から聞こえてきた大好きな娘の声。何気なくそちらを向けば、鶏の唐揚げを撮み食いする○○が目に入る。

 ○○は熱々の唐揚げを食べようとして苦戦していた。齧ろうにも熱くて齧れないようで、自分の息で冷まそうとふぅふぅしている。唐揚げを撮む指先もまた熱いようで、眉を寄せている。

 ―あっち〜!ん〜美味しい!

 倉皇しているうちにやっと一口齧れたようだ。しかし、その一口を飲み込むまでに至るのがまた更に熱いらしく、○○は顔を上に向けてハフハフと口の中に外気を取り入れている。

 そんな彼女に対し、自分以外は普通に話をしている。嬉しくて堪らないくせにいつも顔を逸らしてしまう自分がいけないだけで、本当は口を利くチャンスなど幾らでもあるのに。

 ピアーズの中で先程のマルコの言葉が響き渡る。

 『顔が怖いんじゃないか?』

 そのチャンスを、俺の怖い顔が減らしているのか?

 ピアーズは未だ両手で頬を抑えたまま、マルコとベン、そしてフィンを見やる。フィンの顔を見ると、いつしか彼の笑顔がかわいいと言われていたことを、ピアーズは思い出した。

「・・・フィン、お前のその気の抜けたような顔の作り方、俺に教えろ・・・!」

「あっ!ピアーズさん、酷い!!」


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