(棗×蜜柑)


「棗、ウチ、棗が好きやで」

そう言うと、棗は本から顔を外し驚いたような呆れたような顔をする。
何をいきなり、という顔だ。

「…知ってる」

「…棗はウチのこと…好き?」

「じゃなかったら、付き合わねぇだろ。」

「……」

そうじゃなくて。そんな言葉じゃなくて。

「…なんで泣くんだよ」

棗は溜息をついて立ち上がりベッドに腰掛けているウチの正面に来て両手を握る。
声は押さえても、涙はぽろぽろと落ちていってスカートに染みをつくる。
泣くつもりはなかったのに。止まれと思っても止まらないのが涙なわけで。



「…お前は襲われてぇのか?」

「…へ?」

何もわからないままに、口が塞がれてしまう。
強引なようで、本当は優しいキス。棗はウチを大切にしてくれている。
それはわかっている。頭ではちゃんと、わかっている。
キスでも気持ちは伝わってくる。だけど、たまには…

「…、好きって言ってくれてもええやんか」

拗ねたような言い方。自分の子供っぽさに恥ずかしくなって顔を背ける。
だけど、自分ばっかり好きみたいでたまに不安になる。

「…なんだよ、そんなこと」

「そ、"そんなこと"!?」

棗はウチの気持ちを知ってか知らずか簡単に言う。

「そんなの何回だって言ってやるよ」

「!」


耳元で囁かれた甘い言葉。
自分がほしかった言葉だけど、顔がものすごく熱くなる。
棗は飄々とした表情でお前、顔赤すぎと言ってフッと笑う。

「もう一回言ってやろうか?」

「もうええ!わかったからええ!」

好きと言うのは恥ずかしい。でもウチにとっては言われる方がもっと恥ずかしいかもしれない。
だから、たまにでいい。たまに言ってくれればそれで。
何度も言われたら、ウチの心臓がきっともたないから。


キス、ときどき好き


11/01/15



下書きに放置してました。









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