(棗×蜜柑)


任務から帰ってきた棗はとても苦しげで。
蜜柑はどうすればいいかわからず、渇いたように自分を求める彼の背中にただ腕を回すことしかできない。
どれほど長い時間一緒にいただろうか。もう外は闇に包まれつつある。触れ合った唇をそっと離すと蜜柑は口を開く。


「そろそろ、ウチは部屋に帰るな」

「…ああ」

「…そんな顔しんといて」

いつも通りの声と返事。なのに蜜柑を引き留めるのは棗の表情だった。
普段は絶対に見せない、弱々しい表情。棗は強くて、いつも守られてばかりなはずなのに。
たぶん、本人も気づいてないのだろう。強がりな彼がそん顔を見せたいとは思わないはずだから。


「そんな顔されたら、帰れんやんか」

そしてまた、彼を抱きしめる。
渇ききった彼の心を癒すためにできることは、それ以外に思いつけなかったから。




抱きしめるから、だから
(どうかそんな顔しないで)


10/08/02








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