(棗×蜜柑 学パロ)



いったい何が起こったのか。

蜜柑は今しがた自分の身に起こった出来事を理解できずにいる。
目線をやや上にあげると、彼の瞳に映る自分の間抜けな表情を見ることができた。
ぼんやりとした頭をフル回転して、蜜柑は今あったことを理解しようとする。

今日は、そう、いつも通りな日だった。
学校に行って、授業を受けて、お弁当を食べて、幼なじみの棗と帰宅する。
ちょっと特別なこととして挙げるならば、隣のクラスの男子に告白されたことくらいだ。
しかし蜜柑は彼を友達としか思っていなかったし、お付き合いは断ったのでそれほど特別でもない。
家の前まで帰ってきて、棗にバイバイと言い背を向けた途端に腕を捕まれた。
そして、振り返ると…


蜜柑がそこまで思い出して我にかえると、自分の姿を映した棗の瞳が
また接近してくるのに気づき蜜柑は慌てて彼を突っぱねる。


「な、な、な……」

蜜柑が真っ赤になりながら動揺する様子に、棗は口の端をあげる。
なんの反応も見せない蜜柑を、不思議そうに見つめる先程の扇情的な表情とは違う、
いつも通りとも言える表情である。

「な、がなんだよ?」

「な、棗、アンタ…今、ウチに何した?」

「キス。」

しれっと棗は答える。蜜柑はつい今自分の身に起こったことを、ようやく理解する。
しかし、その理由が全くわからない。
棗とは家が近い幼なじみだ。それ以上でもそれ以下ではないはず、だ。


「なんで」

「したかったから」

「は、何言って…」

悪びれた様子もなく棗は言う。

「お前今日、隣のクラスの奴に好きだって言われたんだろ?」

「あ、それは…そ、それがどう関係あるん?」

「そんな物好きがいるなんて思ってなかったんだよ」

尚も意味がわからずにいる蜜柑に、棗はため息をつき諦めたような顔をする。

「だから、」

セーラーの襟元を引っ張られ、よろけた蜜柑の耳元に棗は顔を近づける。

「好きだっつってんだよ」

ボソリと、けれどもハッキリと聞き取れた言葉に蜜柑は顔を真っ赤にさせる。

「…真っ赤」

「ううううるさい!アンタ絶対ウチのことからかってるやろっ!」

「はぁ?好きでもない奴にキスなんてするかよ」

そう言って蜜柑の顎に手をかけてくい、と上を向かせると蜜柑は怯えたようにぎゅっと目をつむる。
その反応に棗は満足そうに笑うとその手をどける。

「…まぁ、焦ってるわけじゃねぇし、ゆっくり考えろよ」

家の中に消えていく棗を呆然と見つめながら、本当なのだろうかと蜜柑は考える。
だけど、その背中がいつもより眩しく見えるのは気のせいではない気がした。


キスで始まる恋
(音を立てて動き出す)


10/06/20









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