「まさ…、」


今にも消えそうな声で、彼女は俺の名前を音にした。弱弱しく微笑んで、俺に手を伸ばしてくる。俺は何も言わずにその白く細い腕を掴んで自分の腕の中へと引き込んだ。とくん、とくん。彼女の心臓の音が耳に心地良い。ああ、今、彼女はちゃんと生きている。そう思うとどうしようもなく泣きたくなった。



「まさ、好きだよ、」
「知っとる」
「まさは?まさはわたしのこと…」
「好いとうに決まっとるじゃろ」


彼女の肩に顔を埋めてそう言えば、彼女は嬉しそうに、けれどもまた弱く微笑んだ。俺は、どうしたらこいつを安心させてやれるんだろうか。どうしたらこいつにこんな顔をさせないようにしてやれるんだろうか。そんな考えがぐるぐると頭の中で回る。


「わたし、まさのこと大好きだから。だからね、こんなの平気だよ」
「……」
「どんなことされたって、例えみんなから嫌われたって、まさがいてくれれば平気だから…、」
「……」
「このけがだって、痛くないよ。だから、」
「すまん。俺のせいじゃ。俺が、」


俺が、もっと気にかけていたら。こんな酷い事にはならなかった。ぎゅ、と彼女を抱きしめる腕を強める。


「やだ…、謝らないでよ。まさはなんにも、」
「悪くないわけなか。逆じゃ、なんにも悪いことしてないのはお前のほうじゃ」
「っ…!」
「すまんの、怖い目に遭わせて。もう、こんなことにはさせんから。絶対守るから、」
「ま、さ…、」









もう、そんな顔せんといて。



「おい仁王!大変だ!」
「お、どうしたんじゃ、ブンちゃん。そんな慌てて」
「あいつが…、階段から落とされた…!」


目の前が真っ白になった。とはこういうことを言うんだと、その時思った。そんなこと考えている程冷静じゃないくせに。足が勝手に動いて、走る。走る。ああ、テニスやっててよかったのう。なんてまた関係のないことが頭に浮かんだ。そうじゃない。それどころじゃない。大切な、彼女が、突き落とされた。どこから?階段から。誰に?おそらく自分のファンだとかいう女たちに。ふざけるな。ふざけるな。あいつはお前さんたちの勝手な感情で傷つけていいようなやつじゃなか。これだから、女は嫌いぜよ。俺には、彼女だけでいい。嘘じゃない。だから、早く彼女のもとへ。


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わけわかめ(^q^)
標準語と方言ごっちゃですみません!

090812



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