「ただいま…」
「おかえり、ってマカ?!」
ある日の昼下がり、私は家で洗い物をしながらこの家の主であるマカとソウル君の帰りを待っていた。キュッと蛇口を閉めて、手についた水を払っていたちょうどそのとき、玄関の方から聞こえてきた声。もちろんすぐにそれはマカのものだとわかって、エプロンで手をふきながらそこにいるだろうマカへ振り返れば、
「ちょっ!マカどうしたのその傷!」
「えへへ…、ちょっとブラック☆スターと…」
バツが悪そうに言ったマカはすり傷やらたんこぶやらで傷だらけ。おまけに服まで所々破れている。振り返った私が見たのはそんなマカの姿だった。理由を訊ねてみれば、どうやらブラック☆スターと殴り合いをしたらしい。どうやったらこんなになるまで殴りあえるのか…。まあ、ブラック☆スターは女の子でもお構いなしに殴るだろうから、これがその結果なのだろう
「もう!なんでこんなになるまで…!」
「やってる間に本気になっちゃって…。最初は修業のつもりだったんだけど、」
「はあ…、で?ソウル君は?一緒じゃなかったの?」
「マカが手ぇ出すなって言うから、」
「だって、ブラック☆スターだって椿ちゃん一緒じゃなかったし!」
「お前が素手でブラック☆スターに勝てるわけないだろ」
「なっ!なによ、」
「はい、そこまで!」
今度はソウル君相手に第2ラウンド、と言わんばかりのマカと、ソウル君の頭になまえチョップを食らわせた。まったく、マカは頭は良いけどその負けず嫌いなところはどうにかしてほしいわ…!ソウル君もソウル君でなんでこんなになる前に止めなかったのかしら!女の子に傷なんて残ったら大変じゃない!
「修業の一環、にしてはやりすぎよマカ」
「、ごめん…」
「ソウル君も、今度からは止めるなりしなさいよ?」
「……ああ、わかったよ」
「よーし!わかったなら今日の食事当番はソウル君に変更!」
「はあ?!なんで俺が、」
「だって、マカはこの傷だし!私はそんなマカの手当てしなきゃいけないでしょ?ってことで手があいてるソウル君が食事当番!おっけー?」
「はあ、もういい…、わかりましたよ、作らせていただきますよ」
私の押しに負けたソウル君が渋々エプロンを付けているのを見て、やった!とマカとハイタッチをした。そんな私たちにソウル君があるもんでいいかー、と聞いてきて、私はそれに返事をしてマカの手当てを始めた。…まあ本当に派手にやってくれたもんだ
「マカ、」
「ん?」
「修業、お疲れ様」
「…ありがと」
トントンと、ソウル君が食事を作っている音を耳にしながら大人しく手当てを受けているマカにそう言えば、嬉しそうな声が聞こえて。私も思わず口元が緩んでしまった
その言葉を君に
(ブラック☆スターのやつ、今度会ったら私が…!)(ちょ、なまえ?!)
end.
090406 杏雨