「やぁ、なまえ」



そう言って右手を軽く上げニコニコ笑いながら軽い足取りで私に近付いてきた臨也さんは当然の様に私の隣に来て一緒に歩き出す。

毎度のことながら変な人だ。いつも突然私の前に現れて一緒に歩いて、少し話をして「またね」と言って何処かに行ってしまう。帝人の知り合いと知っていながらも当然ながら最初は「何この人」とか警戒して臨也さんに話掛けられても無視をしていたけど、何度も話掛けられるうちに諦めて会話をするようになれば今ではすっかり日常と化した。それに臨也さんとの話を楽しんでいる自分がいる。


「今日は何の用ですか、臨也さん」


ので、すでに定着した質問を口にする。


「あぁ、今日はね、そういえば俺、言ってなかったことあるなーって思って。それを言いに来たんだよ」
「言ってないこと、ですか」


そう言いつつ隣にいる臨也さんの顔を見上げれば、私の視線に気付き、彼は実に楽しそうに、いや、愉快そうに私を見る。そうして口を開き、


「俺ね、なまえのこと好きなんだよね」


なんて、軽い調子で所謂…告白というものをした。予想もしなかった発言に私の足はぴたりと止まる。そんな私に構わず、臨也さんは止まることも、歩調を緩めようとすることもせずに歩く。
そうしていくらか距離が開いたところでやっと止まり固まっている私を振り返って、


「さて、俺はなまえの呆気にとられた顔が見たくて冗談で告白をしたのか、それとも本気でしたのか、どっちだと思う?」


なんて問うてきた。


「…わからないです」


そう答えれば「そう」と、短く答え、いつもと同じ様に「またね」と、言って臨也さんはまた前を向いて歩き出そうとするのを止めるように「でも、」と、言葉が唇から出る。


「私は…好きだ、と臨也さんに言われて嬉しいです」


そう言えば臨也さんは彼らしくもなく少し固まり、「まったく、そういうところが好きなんだよ」と小さな声で言い、笑った。







100610 柚子葉



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