ちゅ、と本当に一瞬だけ唇が触れ、人生初のいわゆるファーストキスを簡単に奪われた。


そう認識してじわじわと頬に集まる熱を自覚した時には私のファーストキスを奪い去った張本人ことレッドはすでに私を見ずにポケモン達の方を向いていた。目深に被った帽子のせいでその表情はまったく見えない。
そんなレッドの横で私は私でパニック状態。
いやいやこういう時こそ落ち着かなければ…って無理無理!落ち着こうとすればするほど、唇の柔らかさとか温もりとか思い出すし、視界がレッドで埋め尽くされた時とかレッドの唇が私の唇に触れた瞬間とか鮮明に蘇るわで落ち着けるわけない…!というか何故いきなりキス!?ただいつも通りにレッドの隣に座って楽しそうに遊ぶポケモンを見ながら会話(といってもレッドは大体無言だから私の一方通行…つまり虚しいかな、独り言)をしていただけなのに…。


「…ファーストキス」
「え…?」
「だったりした?」


一人悶々とする私の耳に届いたのは、無言を貫いていた隣の人物からの脈絡のわからない突然の言葉。驚いて隣を見れば私をじっと見ているレッドの顔が予想外に近くて、心臓がどくん、と音を立てる。


「そ、うだよ…」


しかもそう言った瞬間またじわじわと頬に熱が集まる。おまけとばかりに耳までご丁寧に熱くなりだす。
しかもレッドが一瞬だけ心なしか嬉しそうな顔をして「そう」とか優しい声と優しい眼差しで言うものだから余計に熱くなる。なにこれ。これじゃまるで…私、レッドに恋してるみたい。

…って、いやいやないない!


「あ…なまえ」
「な、なにっ!?」
「…俺もファーストキスだ」
「っ…!」


訂正します、私はレッドに恋してます。




100402 柚子葉



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -