「あいつと…、レッドと何してた」
こわい。
思ったのはそれだけ。今わたしを壁に押し付けてくれちゃってるグリーンに対してそんなことを思ったのは初めてだ。結構な月日を一緒に過ごしてきたけれど。ただ、まだわたしの知らないグリーンがいたってこと。わたしは、グリーンの全部を知っているつもりなんて無い。
「…別に、何もしてない」
「嘘だ」
全く間を置かずにグリーンは否定の言葉を放った。そんな即答しなくてもいいのに。確かにわたしも嘘は通じないってわかってる。その場面をバッチリ見られてしまったのだから。何か気まずくなって目を逸らす。グリーンの手に力が込められた。必然的に掴まれている手首が痛くなる。グリーンがどんな表情をしているかなんて、わからない。
「…抱きしめられた」
「それだけじゃないだろ」
「……キス、された」
また、手に力が込められた。わたしの手首が悲鳴をあげる。痛いよバカ。そう言ってやろうと思って口を開く。開く。開こうとしている筈なのに、開けない。原因は勿論グリーン。目の前がグリーンでいっぱいだもの。唇が触れている。舌が絡み合っている。厭らしい水音が響く。飲み込めなかった唾液が顎を伝う。近い。グリーンの顔が今までにないくらい近い。
「…なに、すんのよ」
「消毒」
「ベタすぎだ。バカ」
ご丁寧に舌まで入れてくれちゃって。レッドにはそこまでされてないんだけど。自重しろ。しかも消毒ってレッドはバイキンか。確かにあいつは年中シロガネ山に籠もってるから何か持っててもおかしくないけど、さすがにそれはないだろ。というかこわいって感じたのに普通に話せるわたしってすごい。
「バカはねえだろ」
「バカだよ。大バカだよグリーンは!」
「お前なあ…、」
「幼なじみに嫉妬したんだ」
「…!」
あ、図星だ。グリーンは目を見開いた。それが図星という証拠。これは昔から変わらない。わたしの知ってるグリーンだ。いつもは見られない表情だから、好き。案外可愛い。
「ほら、バカじゃん。わたしはグリーンも好きなんだから嫉妬なんかする必要ないよ」
「その"グリーンも"ってなんだよ、"も"って」
「だってレッドも好きだもん」
素直に言ってやると、お前らしいな、なんて言ってグリーンは笑い出した。何がそんなにおかしいんだか。だって本当のことだから。昔からグリーンもレッドも大好き。だから抱きしめられたりキスされたりしたって嫌じゃない。寧ろ嬉しい。ふたりに愛されてるって感じられるから。どちらかを選ぶなんて、わたしはしない。できない。
「なあ、俺のこと好き?」
「うん、好き」
だからせめて、わたしも精一杯伝えるの。好きだよ。大好きだよって。選ばないけど、選べないけど、わたしはグリーンが好きだよ。わたしの答えを聞いて、目の前のグリーンは優しく笑った。わたしの、知ってる表情。もうこわいなんて思わなかった。
恋愛バランス
わたしとグリーンは恋人じゃない。わたしとレッドも恋人じゃない。でも愛情表現はまるで恋人のようで。誰もこの不思議な関係を壊したりしない。
初グリーンさん。わからないよ口調とか口調とか口調とかry←
100317 杏雨