籠ノ蝶
8:想念


「高杉ィ?知らねェよ…!」

『っつ…!』


あれから晋助さんを探す為に知ってそうな人に聞き回っている。

突き飛ばされる事はよくあること…高杉晋助の名を口にするだけで態度が急変する事にも慣れてきた。


「大丈夫でごさるか?」

『あ、すいません…』


差し伸べられたその手を取って私は立ち上がる。

黒い服にサングラス…そしてヘッドフォンの男性が私を見下ろしていた。


「ぬしが椿か…」

『…!』

「晋助を探しているのだろう?」

『…え…?』


男の言葉に私は息を飲んで見上げる。


「何故晋助を探す?」

『…っ…ずっと…待っているんです…』

「晋助をか…?」

『待っててくれと言われたんです…でも…このまま待っていたら迷惑かもしれない…確かめたいんです…お願いします…っ…晋助さんの居場所を教えて貰えませんか…?』

「……」


サングラスの男は黙って背を向けて歩き出す。


『まっ…待って下さい…っ…』

「…拙者は今から晋助の元へ行く」

『…!』


小さな声で聞こえた言葉に目を見開く。

また歩き出した男に私は黙ってついて歩いた。



これが正しい事なのかなんて分からない…

もう忘れているかも知れない…

それでも私は彼に逢いたかった…。






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