9:再会
船の部屋の窓から見えた万斉の後ろに居る女に俺は目を見開いた。
「椿…」
俯いて歩く椿の顔が上がる。
『…!』
今更どんな顔をすりゃ良いのか分からねェで俺は思わず目を反らす。
煙管を持つ手が震える…情ねェ…。
少しして部屋に入ってきた万斉を睨む。
「どういう…つもりだァ…?」
「好きにしろと言ったのは晋助ではなかったか?」
「…」
「椿殿はずっと晋助を待っていると言っていたでござる。」
立ち上がって船の外に出る。
椿はぐっと拳を握ってこっちを見る。
あの頃より大人の顔付きの椿にゆっくりと近付いた。
『晋助…さん…』
「…久しぶり…だなァ…」
久しぶりに見た椿は髪も昔より伸びて数段綺麗になった気がした。
そんな事を考えながら椿を見ていれば椿が俯く。
「…!」
ぽろぽろと涙を溢しながら椿はただ良かったと言った。
俺が生きていて良かったと…。
「…ッ…」
気付けば俺は椿を抱き寄せていた。
椿を幸せに出来ねェと決め付けて居たのは俺だった。
俺が通る道で幸せに出来る自信なんざねェ…。
けど今はただ俺が生きていて良かったと泣く椿を離したくなかった…。
〆