4:眼差
『晋助さん…最近お忙しいんですか?』
「ん?あぁ…少しなァ…」
晋助さんと出逢ってからもうすぐ二年が経つ頃になれば、晋助さんが此処に来る回数も以前と比べて少なくなった気がしていた。
金銭の関係かと最初は思ったけれど、それとは違う理由だと言うのは晋助さんの顔色で伺えた。
『外の…戦が激しくなっていると聞きました…。』
その言葉に晋助さんの目はほんの少し…他の人なら分からない位に見開かれる。
「そう、だなァ…」
晋助さん以外の他の客に度々外の話を聞く。
天人の開国に攘夷の声は高まりきり、戦も苛烈になっていると…。
その話を良く耳にする頃だっただろう…晋助さんの来る回数が減っていったのは…。
「今日は…話があって来た…」
『良い話…ですか?』
「それは分からねェが…聞いてくれるかァ…?」
ふと晋助さんの翡翠色の眼と目が合う。
複雑そうな表情の晋助さんの眼は真剣そのもので、私はそんな晋助さんを見て首を横に振るなんて事は出来なかった…。
何より彼の眼がそうさせてくれない。
「多分…暫く此処には来れなくなる…」
『…はい』
「だから…今日は約束しに来た」
『約、束…』
晋助さんの真剣な眼差しは私を射抜くように見つめる。
それに応えるように目を離す事なく彼を見つめた。
とても長く感じる少しの時間が経ってから彼の口はゆっくりと言葉を並べた…。
〆