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あー…やらかした。
こりゃ始末書どころじゃないな…。
自分のやらかした事態に思わず遠い目になる。
『せ、説教は避けたい…』
鬼の副長の名を欲しいままにして、そう称されている彼の説教程とにかく長いものはない。
土方さんの話は同じ事をグダグダ繰り返すのが大概で、その上始末書のおまけ付きだ。
『でも…もうやっちゃったモンは仕様がないよね、うんうん。』
「何が仕様がねェって?酢昆布」
『ひ…!?』
低音の声と一緒に背後から冷たい空気が流れて思わず肩が竦んだ。
ゆっくりと声の主を確かめる為に振り返える。
想像通り青筋立てた我らが副長、土方さんの姿に思わず顔が引き攣った。
『や、え…えーっと…その、これはですね…』
思考を巡らせて言い訳を考えていればグッと首根っこを掴まれる。
「言い訳なら部屋でじっくり聞いてやる。」
『き、聞く気なんてないくせにィィイイ!!』
ズルズルズルズルと土方さんの部屋まで引きずられる。
部屋に入るなり座らせられてじとりと見つめ…いや睨まれた。
蛇に睨まれた爬虫類だか何だかってのはこう言うのを言うんだな…なんて脳裏に過る。
「で、お前は何度言やァ気が済むんだ、あ?大体俺だって同じ事うだうだ言いたかねェんだよ…」
じゃあもういいんじゃ…なんて言葉口が裂けても言えない。
そんな事口にしたらただでさえ長い説教の時間が大幅に伸びてしまう事を私は知ってるからだ。
「それにお前は…」
土方さんの説教を聞きながらどんどん目が虚ろになってくるのを感じてヤバいと思って私は土方さんにバレないように足をつねったりする。
それでも治まりそうにないこの感覚に私は思わず言葉を発していた。
(眠くなってきた…)
(あ!?)
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