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『あ、総悟くん』
市中見廻りという名のサボりはこういう事があるからやめられねェ…。
「酢昆布さん…今日も暑いですねィ…買い物帰りで?」
『あぁ、そうなの。ちょっと買い過ぎちゃって…総悟くんは仕事中?』
買い過ぎたと両手に持った荷物を上げながら笑った酢昆布さんの問いかけに頷いて見せる。
実を言うと俺は酢昆布さんが好きだったりする。
酢昆布さんはそんな事分かってないし、俺の想いなんて想像すらしてねェだろう。
「じゃあ、手伝いまさァ…」
『え、いいの?仕事中なんでしょう?』
「困ってる市民の手伝いするのなんて当たり前でさァ…」
そう言いながら酢昆布さんの荷物を持って笑いかける。
“困ってる市民の”というか“酢昆布さんの”手伝いをしたいだけだけど、まぁこの人は気付かねェだろう。
『ありがとう、土方さんもたまに手伝ってくれるの。真選組の皆は優しい人ばっかりね?』
あぁ、でも銀さんも手伝ってくれるわね…私が周りに恵まれてるのか。なんて嬉しそうに笑う酢昆布さんの言葉に旦那とマヨの顔が浮かんで思わず眉間に皺が寄る。
『…?総悟くん?』
「あ、はい。なんですかィ?」
『眉間に皺。せっかく綺麗な顔なのにダメよ?』
クスクスと笑う酢昆布さんにつられて笑ってしまえば酢昆布さんは言葉を続ける。
『そうだ、じゃあ一つ寄りたい場所があるんだけど…一緒に来てくれる?』
「…?えぇ、いいですけど…どこに行きてェんで?」
“此処でーす”と連れて来られたのは新しく出来た喫茶店。
『仕事中なのにどうかと思ったんだけどお礼に、ね?』
「…っ…喜んで」
『ふふ、良かった』
笑った顔が、ふと見せる少し曇った表情が…酢昆布さんの色んな顔が好きだ。
俺はテメェでもびっくりするぐらい酢昆布さんが…。
『総悟くん美味しい?』
それぞれ頼んだ物を食べていればクスクスと笑った酢昆布さんの言葉に視線を合わせる。
「ん、美味ェでさァ…酢昆布さんと来れて良かったです」
『…!ふふ、良かった』
「酢昆布さん…俺ァ…」
『…?』
言う、今日こそ酢昆布さんに。
いつもは旦那とか土方コノヤローとかの邪魔が入るが今日こそは…!
『総悟くんは私に優しくしてくれてそれで可愛いからいつも思うのよ?』
「え…?」
(妹に欲しいな…なんて…あれ?)
(…そう、ですか)
あぁ、長期戦の予感はしてたけどここまでか。
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