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近藤さんに好意を寄せていた事は相談される前から知っていた。桜の視線の先はいつだって近藤さんだったから。
そんな桜が近藤さんの前で大泣きしたのは一週間。
無意識に唇を撫でる俺はさぞ気持ち悪ィだろう…。
あの口付けの後、俺は付き合って欲しいと申し出た。
勿論断られたが代わりでいい、試しにと無理矢理に付き合うまでにこぎつけたのは俺だ。
「よォ」
『土方、さん…』
忘れさせる自信が有ったわけでも惚れさせる自信が有ったわけでもなかった。
ただこいつの傷を少しでも癒せりゃいい…そう思って言った言葉だったがそれはかえって傷付けてるのかも知れねェ…。
『土方さん』
「…ん?」
二人で町を歩きながら桜は遠慮がちに俺を見る。
『なんか…最低ですね…私』
「…?なんでだ…?」
『土方さんの気持ち…知らなかったとはいえ近藤さんの事…』
「俺が好きで聞いてたんだ…気にすんな」
『…ごめんなさい』
その後は他愛ない話をしながら散歩して桜を送り届けた。
謝るのは俺の方だ…そう思った。
弱みに漬け込むような真似し桜と付き合って…また辛ェ思いさせて…。
次会った時はうんと美味ェ物食ったりして最後にしよう…そう思ってその日は目を閉じた。
それから三日後、ご飯でもどうですかと誘ってきたのは桜だった。
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