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不意に口付けられた。
それはほんの一瞬で……
目の前が真っ白になった。
あの日から全然あの人の顔が頭から離れない。
何とも思ってなかったのに。
優しい兄のような人だとしか…。
口付けを思い出せば顔が熱くなる。
触れた唇の感触に心音が高まる。
もうこのまま死んじゃうんじゃないかってぐらいに…。
『銀…さん』
「なァに?」
『!?』
居るはずのない人の声に目を見開く。
それはもうニヤついた顔で。
『っ…なんで』
「桜が呼んだんだろ?“銀さん”って」
どや顔の彼に勝てる気なんて全然しなくて…。
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