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《っつ…ど…して…どうして…私じゃダメなんですか…》
そう言った桜ちゃんの顔が離れない。
《アンタが一番大事なのは誰だ》
と言ったトシの言葉が離れない。
あの日からお妙さんに会いに行く気も起きずにずっと屯所でボーッと過ごす。
あれからトシとは普通に話すけど桜ちゃんには会っていない…と言うか避けられている気がする。
「ト、トシ」
「…何だ?」
「その…あれから桜ちゃんは…」
「…さァな…気になるならそれ持って会いに行きゃいいだろ…?」
トシの視線は俺の手にある桜ちゃんに借りているハンカチ。
「あ…そ、そう…だな」
「でも…半端な気持ちで会いに行くならやめろよ…?」
「…もう…逃げないさ」
真剣なトシに俺も覚悟を決めて屯所を出た。
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