ジリリリリ…!


『う…ん…』


カチリとうねうね動くジャスタウェイ型の目覚ましを止める。


『ケホッ…』


ここで体の不調に私は気付いた……あれ?


『(だ、だるい……)』


のそのそと体を起こして布団を片付ける。


『(えーっと……ご飯、作って…皆を起こして…)』


それからそれからと考えるもいまいち思考が遅い。

いや、病は気からとも言うしな…うん、気のせいだ。

クラクラとする視界と戦いながらなんとか台所に辿り着く。


『ケホッ…ゴホッ…!(台所ってこんなに遠かったっけ?)』


ブルッと身震いしながら昨日の事を思い出す。

昨日は仕事から帰る途中で土方さんの気遣い虚しくどしゃ降りの雨に打たれて帰って…銀さんがそんな私を見て凄い顔して風呂入れだの温かい物飲めだの慌ててたっけ。


『ふふ…ケホッ…』


あの顔は相当面白かったと思う。

冷蔵庫を開けて流れてきた冷気にまた身震いする。


『皆には悪いけど簡単な物にしよう……』


ズズッと鼻を啜りながら体に鞭打って目玉焼きと魚を焼いてるとふと思う。

朝の万事屋は静かなもんで…体調のせいかどうも寂しく感じる……。

どうした私、しっかりしろ!

なんて思いながら調理を進める。


「おはようアルー…」


いつもより時間が掛かってたのかもうすぐ出来る所で目を擦りながら寝癖をぴょんぴょん跳ねさせた神楽ちゃんが起きてくる。


『あ…おはよう、神…ケホッケホッ!』

「…!桜、顔真っ赤アル…!」


私の顔を指差しながら驚いた顔で神楽ちゃんは言う。


「ぎ、銀ちゃん起こしてくるネ!!」

『あ!ま、待って…先に顔…ケホッ…洗って…』


こんな時に何言ってんだなんて言いそうな顔で神楽ちゃんは私を見る。

正直自分の体調の悪さぐらい分かるし神楽ちゃんの言いたい事は私も分かるけど……。


『お願い…ね?』

「う…分かったアル…」


渋々頷いた神楽ちゃんにホッとしながらそんなに赤いのかと自分の頬に手を当てる。

あ……熱ぅぅう!!えぇええ…!?


『き…気のせい気のせ…ゴホッ…!』


く…っそ…!咳め…何なんださっきからァァァア!!

私の台詞の邪魔をするなァァァア!!


『う…やば』


一瞬グラッと視界が歪む。私だって大人しく寝てたいよ!だけど今日も…


『仕事があるんだ…ケホッゴホッ…!』


よォォオオ!!ぐらい言わせて!!

途中でやめたら“一人にしないで”“すまない、仕事があるんだ…”みたいな昼ドラのワンシーンみたいになってんじゃんか!

と…とにかく…朝食運ぼう、うん!

フラフラしながらも朝食をなんとか並べる。

それから定春の餌入れに餌を入れる。


「クゥーン…」


と心配そうな鳴き声に顔を上げる。

え、もしかして犬にも分かるぐらいヤバい顔してる!?


『だ、大丈夫だよ。定は…ケホッ…!』


……説得力ゥゥウウ!!

咳に苛々していれば今度はズキズキと頭が痛んでソファーに腰掛ける。

ついに頭痛までとは…!!


「どこが大丈夫アルか…!」


むーっと仁王立ちの神楽ちゃんに苦笑いが浮かんだ。






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