「何か飲むかい?」
『あ、じゃあお茶で…』
このお店の雰囲気が実は結構好きだったりする。
色んな人が笑い合って裏表なく会話して楽しんで…。
「仕事帰りなんだって?」
目の前にお茶が置かれた音とお登勢さんの声にハッとして意識をお登勢さんに向けた。
『あ、ありがとうございます。そうなんですよ』
「銀時があんなんだからアンタも大変だねェ…」
『い、いや…そんな事は』
「でも金が底をつきてアンタが働きに出てるんだろう?」
『あ…でも、お世話になってるんで生活費と家事ぐらいは…』
ほぉ…と感心した様子のお登勢さんに再びハッとなる。
『あ…!いや、そんな大層な事じゃないんですけど本当に助かってますし!』
大層な事を言いたい訳でもやりたい訳でもない、嘘のような本当の話を信じてくれた銀さん達に少しでも喜んで貰いたい。
ただそれだけ。
私が慌てて言った言葉にお登勢さんが笑い出して私は目を丸くした。
『あ…あの…?』
「あぁ、いやごめんよ。あんまり必死に言うもんだからねェ…」
『あ…えーっと…』
お登勢さんの言葉に思わず顔が熱くなりながら視線を泳がせる。
「まぁでも良かったよ。上手くやってるなら」
お登勢さんはそう言いながら美味しそうな親子丼を目の前に置いた。
『え?あの…?』
「仕事帰りなんだろ?これでも食べておきな」
『!あ、ありがとうございます!』
慌てて頭を下げればお登勢さんは満足そうに一つ頷いてくれた。
「銀時はだらしないし、いつまで立っても落ち着かないし、家賃だって払いやしないけどねェ…アレで結構面倒見はいい方だから愛想尽かさず居てやっとくれ」
『あ…勿論です…っ…』
お登勢さんの言葉に心が温かくなるのを感じながら出された親子丼を食べ始めた。
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