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教えて、麻衣姉ちゃん!
萌え 2018/10/28 23:03


・魔術師麻衣兄さん×コナン
・兄さん視点
・親友の名前は***





 不審な点を見つけるとグイグイ来る好奇心の怪物であること以外はとてもお世話になっている、見た目小学生中身高校生の少年が、俺の手を引いて「米花駅まで送ってあげる!」と言い出した時点で何かあることは察していた。いやまあ、普段から米花町に限らずいつでもどこでもバラエティに富んだ変態共に襲撃される日々を送っているから、心配されている面もあるのだろう。俺の手を惹く江戸川少年は変態以外のトラブルホイホイだが。しかも事件が寄って来るし、本人も事件に突っ込んでいくという割とどうしようもない感じの。

 それはともかく、対変態ではコナンがとても頼りになるのは明らかだ。当初は一蹴り一殺だったボールシュート技も、最近は一蹴り二殺くらいはやらかすレベルに進化していると聞く。跳弾って奴だろ、知ってる。跳弾という単語を初めて知ったのは某黒猫掃除屋漫画だが、コナンも恐らく、その主人公レベルの精密シュートができるはずだ。さすが米花町、民間人()も逞しい。逞しくない一般的な人間の俺が、江戸川大明神様の護衛を頼もしく思うのは当たり前である。

 しかし、普段は変態から助けられることはあっても、米花駅まで付き添い護衛などされたことがない。それはつまり、彼に付き添い以上の目的があるのではないかと思われる。案の定、彼は知り合いがいる場所から完全に離れると、俺と手を繋いだまま深い深いため息をついた。お? 愚痴か? 蘭姉ちゃんとの恋愛相談か? 男の俺に女心の解釈は求めるなよ?

「ねえ、麻衣姉ちゃん」

 コナンは少しだけ逡巡してから俺に尋ねた。

「突然、何の脈絡もなく、冷蔵庫の中が謎の特設スタジオに繋がることってあると思う?」

(アッ……これは……ラブラブ相談じゃなくてラブ・クラフト相談だわー)

 これなら女心を尋ねられた方が良かった。俺は心なしか死んだ目をしている小学生男子に、そっと憐れみの眼差しを送った。俺が知らない間に、彼は碌でもない目に遭ってなおかつ生還していたらしい。本当にお疲れ様です。あと、冷蔵庫に限らず、前後の脈絡なく訳の分からん場所に飛ばされるのはクトゥルフでは恒例行事です。探索者は諦めて攻略に挑んでください。そしてダイスの女神に祈れ。

「あり得たから話を振って来たんだろ? よく生還したな、お疲れ様」

 労わりの想いを込めて優しい声色で告げてやると、コナンはこちらを見上げた。上目遣いの美しい青い双眸は、完全に死相が浮かんでいた。あれだ、ウユニ塩湖に似ているかもしれない。米花町のごり押し探偵にこの顔をさせるとはさすがクトゥルフ、容赦がないぞ。原因は何だ、クトゥルフ界のトリックスターか? それとも冷蔵庫なだけに悪食食いしん坊の方か?

「信じてくれるんだ……ていうか、話の理解が早すぎない?」

 幼い指がきゅっと力を込める。この指が爆弾の解体とかするんだぜ、信じられるか? 俺はふっと微笑んで見せた。俺以上にクトゥルフ神話関係で理解が早い奴もなかなかいないだろう。コナンは意識的かどうかは知らないが、俺と***、リドル、対策班の刑事の中では一番適した相手を選んだわけだ。

「目が覚めたら四角い部屋の中で毒入りスープを飲めって強要されたことがあるからな」

「何で生きてるの?」

「おい、優しさが足りないぞ小学生男子。もっと猫被って」

「麻衣姉ちゃんのしぶといところ、ボクだ〜い好き!」

「化け猫被るのはやめとこ?」

 誰が可愛らしく罵倒しろと言った。俺は美少年に詰られて喜ぶ専門職ではないぞ。ベルモットのような美しいお姉さまだったらちょっと考える。

「で、冷蔵庫が特設スタジオになってたって? 名状しがたいテレビ番組の撮影か?」

 例えば、ヘルPとかいう視聴率信者のプロデューサーがいる感じの。割と軽率に人をぶち殺して視聴率を狙っちゃう系の。そのスタジオが広がっていたならばそれはクトゥルフ神話とはまた別の話であるし、目の前にいるコナンが本当に生きた人間なのかも定かではないが。

 幸いにも、コナンは首を横に振った。

「ううん。ただ、公衆? の面前で安室さんが料理を作らされたんだ」

「安室さんがまさかの巻き込まれ事故」

「いや、むしろボクの方が安室さんに巻き込まれたんだと思うな」

 俺の言葉に反論する江戸川様の分析が冷たい。もしかすると安室のテリトリー、例えばポアロの冷蔵庫を開いたら変なことに巻き込まれたオチなのかもしれない。ヤバい、ポアロの事故物件レベルが上がってきた。1階2階共に殺人事件が起きているのに、さらに追加でクトゥルフ神話事件まで起こるのか。もう呪われてるなこれ。ビルのオーナーは泣いていい。これが事故物件萌えイギリスだったらワンチャンあったかもしれないがここは日本である。慈悲はない。

「こういうおかしなことって防げないの?」

 もっともなことを尋ねるコナンに、俺は満面の笑顔を返した。

「防ぐ方法があるならとっくにやってる」

「ソウダヨネー」

 コナンの声は、俺が今まで聞いた中で最も心がこもっていなかった。

「お祓いにでも行ってみたらどうだ? 逆に変なの付いてくる可能性もあるけど」

「遠慮しとくね」

 ですよね。俺とコナンは力なく微笑み合った。


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