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似非文学少女を知る捜査員たち
萌え 2018/07/01 00:23


・モブお巡りさんたちしかいない
・警視庁捜査一課特命捜査対策室第0係の皆さん(多分2、3人)
・似非文学少女と国家の狗の時間軸
・風見さんとのOHANASHIの後、こんなやり取りがあったかもしれない
・アメリカにデルタグリーンあるなら日本も対策班欲しいという願望
・セリフの羅列。人物描写する気がない。合間に思い出したような説明文。
・前提に三人組が2年前に「奇妙な共闘」シナリオ経験済み





「警視庁公安部があの子を探りに来たんだが」

「……え、なんで」

「よりによってあの子」

 通称あの子、で通じるのは谷山麻衣。天涯孤独で健気な女子高生に見せかけて、内実は神経が荒縄よりも図太いメンタルゴリラである。その辺の捜査員よりも余程頑丈な精神力は、一説によると度重なる変態遭遇歴によって育まれたのではないかとのことだ。彼女の被害件数は生活安全課が頭を抱えるレベルであり、調書を目にした特命捜査官も絶句した。噂では最近、米花町の某交番では谷山麻衣担当巡査までいるという。彼女が悪いわけではないとはいえ、持ち込まれる変態事件によって他の事件への対応が疎かになるのはまずいので、仕方がないのかもしれない。さらに付け加えると、最新情報ではかのキッドキラーと呼ばれる天才少年が度々彼女を助けているらしい。謎の人脈である。

 その谷山少女は、警視庁捜査一課特命捜査対策室第0係にとって特殊な重要人物だ。

「他にも二人いるよな。あの子よりよっぽど目立つイギリス人とか、腕っぷしがヤバい大学生とか」

「あの大学生、ウチに就職しないかな。面接まで上がってきたら引き抜くのに」

「どうしてピンポイントにあの子なんだよ公安怖ぇ」

 彼女と仲が良い二人の青少年もそれなりにキャラが濃い。アメリカのミスカトニック大学からの留学生という(知る者にとっては)曰く付きの経歴のイギリス人美少年と、千葉の某大学に通う古武術を修めたイケメン大学生だ。彼らと直接交流のある捜査員でも接点が分からない三人組だが、とにもかくにも仲が良い。仲が良すぎて、警察の一部部署の世話になるような事件でも一緒に行動している始末である。彼らの友情が壊れないのが不思議で仕方がない。(精神が壊れるような)困難を乗り越えて絆が深まっているのかもしれないが。

 ちなみに二人の青少年だが、イギリス人の方は頭の切れる超能力者(スプーンをまとめて3本へし折っていた)で、日本人の方は力業でごり押し派の霊能力者(睨んだだけで霊が消えた)という但し書きが付く。大っぴらに触れ回っているわけではないが、本当に、本当に、少女よりも余程目立つ人物たちであった。それだけに、彼らには少女の隠れ蓑としての役割が期待されていたのである。

「公安部にもこういう案件担当の奴らがいるだろ? どうしてそっちに行かないんだよ」

「そっちを通さず単独で探ってるんだろ。そうでもなきゃ止められる」

「ああ〜……同じ部署でもアレ案件絡むと連携しないよな……」

「しかもあの子単品だと未承認生物案件の確率高いし」

「幽霊の方がマシなんだよなぁ」

「いや心霊系もたまに呪いがヤバいだろ。コトリバコはトラウマだ」

 未承認生物。生物学において存在を実証されていない生物を指す。世間でも一時話題になったところではツチノコやネッシーも含まれるが、話題には上がらない、あるいは上がらないようにされているものもある。人類に対して友好的であったり敵対的であったりと個によって様々であるが、大抵が人では持ちえない能力を持っている。

「俺たちは上手くやってる方だよな。お陰様でゴミ箱かって勢いで曰く付きの事件を放り込まれるけど」

「俺なんて最近、鑑識課の奴に歩くXファイルって言われた」

「訳の分からん仏ばっかり集まるからな……」

 日常の隣でひっそりと息をしている非日常。この世界で生きるのならばその存在を知り、受け入れ、時には立ち向かい、時には逃げられるようにするのがいい。それが当初の日本の対応方針の主流であった。幽霊もオカルトも未承認生物も、災害の一つであるのだと。地震大国とされる日本らしい、備えあれば患いなし精神である。しかしやがてそれら、特に特殊な未承認生物が関わるような案件についてはそれではいけないという認識が生まれるようになった。

 日本は非科学を事実として提示されるとどのような混乱が起きるのかを学んだ。それが1980年代後半で起きた超能力ブームである。今では当時を振り返り、インチキだ真実だとネットの片隅に書かれる程度だが、ブームの火付け役であるユリ・ゲラー氏が日本に与えた影響は大きい。テレビを通じて世間を席巻したスプーン曲げは、彼の真似をするゲラリーニたちを生み出し、人生を転落させただけでない。“本物の超能力者”を誕生させてしまったのだ。大半は本当にインチキだった者のように周囲からの疑惑の目で転落の一途を辿ったようだが、中にはJSPP(日本超心理学会)の目に留まった者もいる。それを通して日本警察――日本政府は察した。もしこれが超能力でなく魔術だったらどうなっていたか。増えたのはゲラリーニではなく魔術師であり、それが関わる犯罪が頻発することになっていたのではないか、と。あるいは魔術でなく闇に潜む未承認生物の存在が暴かれていたら、それを追う一般人が増えて事故件数が増えるか、それらを祀り上げるカルト宗教団体が増えるのではないか、と。

 日本は情報を公開して備えるのではなく、秘匿して国民の動揺を防ぐことを選んだ。そして備えとして、日本警察の一部に公安とは別の秘匿対策班を設置した。それが警視庁捜査一課特命捜査対策室第0係のような、警察の各部署にひっそりと存在する――言ってしまえば常識的な捜査法ではお手上げ案件のゴミ箱的な対策班であった。

「で、なんだって公安はあのリアル魔法少女を探りに来たんだ?」

 リアル魔法少女――谷山麻衣はあらゆる意味において特例だ。

 彼女は魔術師である。それも彼女曰く、翻訳の曖昧な文献から学んだようなインスタント(付け焼刃)ではない、本物の魔術師だ。それは霊能力者や超能力者よりもずっと眉唾な存在で、驚異的で、希少だ。加えて正気を保った理性的で善良なそれとなるとさらに貴重である。捜査員は時には敵対的な魔術師を相手取ることもあるので、彼女のような存在は生存率と逮捕率を上げるためには重要だ。

 さらに、未承認生物に関する知識が異常なまでに深い。どこで手に入れたのかが分からないそれは本人にも分からないようだが、正確性が恐ろしく高いのは実証済みである。知識を彼女の頭から引き出すこと自体が危険であるため、積極的な知識の聴取は行われないが、彼女の発言が事件解決に繋がったこともあった。

「二年前の防衛省絡みの案件だよ。木曜会の」

「あれ公安案件だろ。なんでこっちなんだ」

「診断書の偽造をこっちでやったから?」

「だろうな……」

 診断書の偽造は公文書偽造罪にあたる犯罪だ。警察であろうと許されない。しかし、こういった特殊な事例に関わる場合ではむしろ、捜査員は“適切な隠蔽”を推奨される。本来、違法作業を行う部署は公安くらいだが、隠蔽を第一義とする例外が彼らのような対策班だ。だからこそ各部署に存在する一部の例外対策班は縦横で繋がる代わりに、だとえ同じ部署内でもそれ以外との繋がりが薄い。全ては日本社会に存在する、治安悪化の原因となる真実を闇に沈めるために。隣で同じ釜の飯を食う仲間が、実は幽霊だの未承認生物だのが関わる案件を内密に担当していたりする。そんな現実があった。

 そして防衛省絡みの案件とは、二年前に起きた自衛隊と未承認生物との抗争だ。三人組が揃って巻き込まれて見事に生還した事件でもある。未然に防がれたもののテロも関係していたため、公安の中の対策班が、大変という言葉では言い表せない程忙殺されたのではないかと噂されている。まさか公安事件に繋がるとは思わず、公安以外の捜査員も数名、彼女たちに関わっている。当時、見知った少年少女のアレ案件を隠蔽する診断書を偽造した結果が、今回の突撃隣の公安警察だ。いっそ全部公安に丸投げしていれば良かったのかもしれない。

「でも、防衛省の案件は偶然じゃないか? あの子を探ったら変なものまで出てきたってオチだろどうせ」

「あれでいて叩けば叩くほど埃が出るからな……」

「冒涜的な埃だな」

 埃は知識とも経験とも技術ともいえる。答えはどうせ返ってこないだろうと思いながら問いかけたら、斜め上の真実がぽんと提示されることは序の口だ。あれは気軽に斜め45度の角度で叩いていいブラウン管テレビではなく、碌でもないものが詰まっているパンドラの箱だ。

「そもそもなんで探ってるんだ? あの子、普段は人畜無害の女子高生だろうに」

「あの公安、実はこっち案件に絡んであの子を見かけたとか?」

「その割には精神状態が普通に見えないか?」

「公安だからそのくらい隠せるとか」

「公安すげえな。俺、初めて千葉の魚見た時、三日は魚を受け付けなかったのに」

「三日で済んだならいいだろ」

 千葉の魚、とは深きもの(ディープ・ワン)と呼ばれる半魚人のような種族である。呼び名の通り、千葉に大きな集落を持っているので、千葉県警内の対策班が毎日神経をすり減らしている。だが東都の対策班も、彼らが気まぐれで移住しないだろうかと不安にならなくもない。なお、実際に目にすれば三日魚が食べられなくなる程度ではない容貌のため、対策班の捜査員もそれなりに頑丈な精神の持ち主と言える。

「で、隠し通したのか」

「ひたすら黙秘を通した。でも何かあるとは完全にバレてるだろうな」

「あの子を持っていかれるのは困るなぁ。アレ案件だと頼りになるし、幽霊系でもイケメン君を引っ張って来てもらえるからなぁ」

「ホント就職しねぇかなあの大学生。寺生まれのTさん並みとか頼るしかない」

「とりあえず、公安の対策班には連絡しとけ。釘刺してもらわないと、本当にヤバいことを探り当てられる」

 そんなこんなで彼らが速やかに対策班繋がりで報告を上げた結果、公安エースの男が上司に釘を刺される羽目になったのだが、もちろん彼らは知らない。そして知り合いのリアル魔法少女が公安案件絡みの組織幹部に連れ回されていることも、もちろん知らないのであった。



+ + +



警察官を期待される親友がちらほら。実際に彼が試験を受けたら、どこかの対策班に引っ張られます。

公安の任務報告はゼロに上がりますが、ここでは神話関係だと降谷さんを通り過ぎてさらに上まで行くイメージで。黒の組織が本格的に神話系のことに首突っ込んで、なおかつそれを降谷さんが立証出来たら、晴れてそっちの情報も開示されると思われます。潜入捜査員のSAN値を更に殴りつけていくスタイルとは。



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