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日本のお巡りさんがすごい話
萌え 2018/05/07 21:11


・ゾル兄さんはラスティネイルのコードネームでバイト中
・降谷零のドラテクが神懸かっている通り越してキ○ガイの領域であるという話。
・ゼロの執行人ネタバレ注意。降谷零の見せ場なので特に注意。
・一度見ただけなのでうろ覚えにも程がある描写

※追記5/14:本当にあちこち間違ってたうろ覚え描写でしたがこのままにしときます。










 俺は黒の組織(通称)の雇われ暗殺者だが、何も暗殺だけがお仕事ではない。隠密性が抜群に高いため、ちょっとした監視役を任されることもある。とは言っても、本当に見守るだけであり、“あのお方”が興味を持った現在進行形の事件などを外側から見て、起きたことをそのまま伝えるだけだ。特に手出しをすることはない。まあ、自分の手足を眺める第三の目とも言えるだろう。

 そんな俺が持つ連絡手段はスマホである。これは“あのお方”が選んで買ってくれたもので(本体代は一括払いらしい)、ベルモット経由で俺に支給された。というのも、俺の財力がカツカツ過ぎて、スマホを買う金もないからだ。真面目にそれを告げた時、たまたまその場にいた初対面のキャンティ(パンクっぽい雰囲気の女性狙撃手)に「こいつヤベェ」という目で見られたのは地味に傷ついた。あなたは別方面でヤベェ人種ですよね、と思ったが黙っておいた。一方、スマホを渡してくれたベルモットの生温かい視線も辛いと言えば辛かった。ハンター世界なら汚ぇ貯金額(暗殺業のため)が相当あるのだが、世界が変わった途端にこれである。ゾルディックのブランド力は半端ない。

 ともかく、俺はスマホで“あのお方”やベルモットと連絡を取り合い、仕事を受けたり報告をしたりしている。どうでもいいが、“あのお方”の登録名は“ヴォルデモート卿”である。「お辞儀をするのだ、ポッター」とは言わないが。いやほら、名前を言ってはいけないあの人といえばそれではないか。コナン世界にハリポタは存在しないらしいので、安心して使える名前だ。着信音は暗黒卿のテーマ曲というブレっぷりだが。普段はマナーモードだからセーフセーフ。

 なお、ベルモットはたまに食事に誘ってくれるので、連絡が来るたびにテンションが上がる。美人とお食事会(デート)なんてご褒美じゃないか。……大丈夫。さすがに食事代くらいは出せる程度に給料をもらっている。絶世の美女と食事に行けるのなら、その後数日間の食事が塩と水でも許せる(一度やったことがある)。そして「ラスティネイルは手を加えると、甘いカクテルになることが多いのよ」とか、「ロブ・ロイに興味はない?」と言われたこともある。カクテルに詳しくないので意図を察せなかった俺が、恥ずかしながら正直にそれを告げると、それはそれで優しく教えてもらえた。控えめに言って最の高である。ただ、彼女に気があるらしいカルバドスにはいつか頭をぶち抜かれそうで心配だ。アッ、故人だったわ……申し訳ない。死体蹴りのつもりは本気でなかった。道理でキャンティやらコルンに「あの女はやめとけ」だの「あの女はマジでクソ」だのとネガティブキャンペーンをされるわけである。お姉さま、ヘイト買いまくってますが大丈夫ですか?

 閑話休題。そんな俺が今回駆り出されたのは、噂のIOTテロで騒がしい東都の、もっと言えば警察の様子を軽く見てくるものである。組織も完全なアナログ体勢なわけないので、気になる話題らしい。とはいえ本格的に首を突っ込みたいわけでもなく、成り行きを見てくる程度を申し付けられた。警察庁を中心とした地域に避難命令が出たからだろう。

 俺は東都の中心部から避難先となっているエッジ・オブ・オーシャン内のカジノタワーに向かっていた。向かってはいたが、あまり接近し過ぎるつもりはない。大変なメタ推理だが、現在の状況は劇場版時空だと思われるため、新設された建物に行くと爆死する気がするのだ。案の定、数日前にサミット会場が完成直後に爆破されていた。早すぎかよ。だから俺は途中でバイクを降り、エッジ・オブ・オーシャンと本土を繋ぐ橋を自分の足で走破する気満々だ。どの道、橋は大渋滞を起こしているので、バイクと言えども途中で引っかかるのがオチだ。

(……おおっとぉ?)

 気配を消した状態でモノレール用の路線を走っていると、本土の方から猛烈な勢いで接近してくる一台の車が目に入った。よくよく見てみると、白いそれはマツダRX-7で、運転席には通称安室透・俗名バーボン・本名降谷零が、助手席には見た目は江戸川コナン・頭脳は工藤新一が乗っている。

(ああ〜〜これはクライマックスですね分かります)

 恐らくカジノタワーには愛しの蘭姉ちゃんがいたり、タワーが爆破されそうな何かがあったりするのだ。これ以上近付いてとばっちりで死ぬのは困るので、エッジ・オブ・オーシャンには上陸しない方がいいかもしれない。そうしよう。

 俺は少しだけ走る速度を落としつつ、後方の道路を走るスポーツカーを注視した。見れば、フロントガラスが無残にも割れている。……その割に車内に破片が少ないように見えるのは、内側から破られたからだろうか? 車は既にどこかにぶつけてくたびれた様相のため、もしかするとひび割れて視界が悪くなったガラスを自力でぶち破った、のか? 基本的に非力なコナン少年の物理攻撃手段は専ら、キック力増強シューズによる超次元シュートなので、車内でぶちかますはずがない。そうなるとぶち抜いたのは降谷さんの方だろう。

(いやいやいや……確かにフロントガラスは内側からの力には弱いけど。“ぶち抜く”なら話は別だぞ?)

 車のフロントガラスは二重構造になっており、特殊な膜を2枚のガラス板で挟んでいる。つまり、完全にぶち抜くには中間膜が邪魔になるのだが……あれは恐らく、余裕で抜いている。状況的に、ご丁寧に工具を使っている気がしない。要は素手の可能性が高い。

(ゴリラかな?)

 何故か念能力者かなと思う前にゴリラだと考えてしまった。だってこの世界、念能力者はいない(はずだ)し。降谷零や赤井秀一といったハイスペック共が念能力者だったら、むしろこの程度で済んでいるはずがない。半端ゾルディックの俺なんて負けそう。降谷さんと真っ向からの殴り合いなんてしたくないし、赤井さんには余裕で狙撃(スナイプ)されて死ねそう。鬼かよ。

 RX-7のカーブの仕方が、いちいちドリフト決めてきてヤバい。スピードを落とす気が一切ない走行である。アクセルはベタ踏みかもしれない。スポーツカーの最高時速は洒落にならないのだが正気だろうか。正気だろうな……。180q表示をすーっと追い越すメーターを幻視した。

 しかしその先の道路は依然として大渋滞である。どうする気だろうかと見ていると、白いスポーツカーは一度車道の右側に寄り、その勢いで車体を傾け――横転一歩手前の変則的走行で車の間をすり抜けた。

(わー……カーアクション映画かな?)

 アクションの規模のでかさから、やはり今は劇場版の時間軸なのだろう。何なんだあの変態軌道。映画のジャンルが違いますよ。え? 名探偵コナンだから合ってる? 合ってるかー……。

 名状しがたい軌道で車の間をすり抜けたRX-7は、進行上に運良くあった(それこそ物語上の必然で)車を積んでいないレッカー車に進入した。それをジャンプ台代わりに、RX-7が宙を裂く。レッカー車が上手いことカーブ地点にあったお陰で、白い車は車道のさらに上を走るモノレールのレール上に着地した。なお、俺の目の前であった。気配を消していたお陰でこちらに気付かれてはいないが、問題はそこじゃない。

(は???)

 辛うじて声にはしなかったが、クエスチョンマークが無駄に重なる程度には目を疑った。闇夜に強いハイスペックなゾルディック製の両眼だが2、3回は疑った。それでも変わらない現実に絶句した。お巡りさん、ここ、車道じゃないですよ。

 繰り返しになるが、どこからどう見ても、モノレールのレール上を、白いスポーツカーが爆走している。推定速度は余裕の100q超え。もしかすると200q近く出ている?

(何やってんのお巡りさん!?)

 交通機動隊に助走付けて殴りかかるどころか機関銃掃射するレベルの暴挙である。真っ当な車道でも初っ端から余裕というか貫禄のスピード違反だが、道交法を違反し過ぎて最早何をどう違反しているのか分からなくなってきた。道交法違反のゲシュタルト崩壊である。なんぞそれ。お巡りさんこいつです、じゃなくてこいつお巡りさんです。違法行為は公安のお家芸ですかそうですか。

 そして危機はまだ続く。正面からモノレールが来たのだ。モノレールの運転士には心の底から同情する。普通に運転していたら正面からスポーツカーが爆走してきたとかどんな罰ゲームだ。割りと死を覚悟するシチュエーションである。もちろん、このままでは数秒後に正面衝突するだろう。

(どうせまた変態軌道で避けるんだろ)

 そうでなくとも、この状況下では俺としては助け方が分からない。これはきっと俺への無茶振りではなく、降谷零にドラテクを要求しているのだろう。こうなったのはあなたがモノレールのレールに来たからですけどね。さてどうする気だろうかと走りながら見ていると、コナンの叫び声が聞こえた気がした。本当にご愁傷さまです。

 しかし何をどうしたのか、RX-7は走行するモノレールの側面に、右側のタイヤを絶妙に接触させて走り抜けた。遠心力とか摩擦とかその辺りはもう考えない方がいい。俺の脳裏を懐かしのミニ四駆が疾走していった。コロコロとかボンボンとか、その辺りの。何というか、走り屋漫画と比較してはならない領域に達している気がしたので。ハリウッドのカースタント(CG含む)だって、こんな訳の分からん謎軌道はしないのではなかろうか。モノレールの運転手も乗客も、生きた心地がしないだろう。

(うっわ、えっぐ……)

 喉の奥が引き攣れた。同乗しているコナン君の心中をお察しする。外側に投げ出されているのは左側、要は助手席に乗るコナン君側だ。彼は今とても死に近い場所にいる。俺だったら絶対に乗りたくない、火葬場通り越してあの世に向けて爆走する霊柩車には。

 俺はひょいと首を引っ込めて、折れて飛んできた白いサイドミラーをかわす。RX-7は無事にモノレールを乗り切り、ズタボロの様相でエッジ・オブ・オーシャンに向けて消えていった。俺は徐々に速度を下げ、橋の中央付近で立ち止まる。そこで彼らを見送り、大きなため息をついた。ちなみに俺はレールの端を移動していたので、正面からモノレールにケンカを売るような真似はしていない。

(あのドラテクが要求されるなら、ゾルディックでも公安にはなれねーわ……)

 されるわけねーだろバーロォ、とコナンに突っ込まれそうなことを考えた俺であった。

 なお、カジノタワーは無事破壊された。倒壊はしなかったが、上層階の一部が高速の飛来物に抉られていた。その直前に白いスポーツカーが宙を飛んでいた気がしたが、見なかったことにした。だって雇い主への説明が難しい。



+ + +



※橋を抜けた後、恋バナしてからクレイジーアクションをする降谷&コナンとは。



これらのドラテクを瞳孔かっぴらいた凶悪な表情でやらかす男・降谷。お巡りさんの顔ではない。クレイジーサイコポリスの一歩手前かなと思いました。本気の降谷はスリル・ショック・サスペンス。アドレナリンじゃぶじゃぶ出てそうな彼には正直興奮しました。こいつ、愛国心キメてきてやがる。愛国心がカンストするとこうなる事例。コナン君の持ってるスマホが何回も手から飛んでて、いつか失くすんじゃないかなと思いながら見てました。2回はお手玉してた。
とは言うものの、コナン君を助手席に乗せてる時点で、命をベットした賭けをやっているわけではないとは思いますが(あの運転で……)、只事ではない獰猛な笑顔は控えめに言って最高かよってなりました。純黒冒頭のカーアクションを軽々と凌駕してくるとは思いませんでした。そしてコナン君を空中キャッチしてからの銃連射→着地の流れありがとうございます。協力者として相方守り抜く降谷さん尊い。腕怪我しても意地でもコナン君離さない根性素晴らしい。

コナン君もいつも通りの派手なスケボーテク素敵でしたけどね! ……いやいつもよりさらに飛ばしてきてたな。普通なら5、6回は軽く事故る。助けに入った降谷さんに感動しつつ、素手でフロントガラスを叩き割る姿に(だからゴリラなんやな)と納得した自分がいました。



なおカクテルうんぬんのお話。

ラスティネイルの材料:スコッチウィスキー+ドランブイ
ロブ・ロイの材料:スコッチウィスキー+スウィートベルモット+アロマチックビター

お察しください。
ラスティネイルだとマティーニほど気の利いた組み合わせはなかったです多分。スコッチ祭り状態。


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