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余計な真実も視えている
萌え 2018/05/04 11:56


・クトゥルフ三人組で麻衣兄さん版
・親友視点
・親友の幽霊見えるスキルを強化しまくったら
・事件に巻き込まれるのはいつものこと
・米花町はホラータウン
・お巡りさんはホラースポット
・光の魔人先輩ぱねえっす!
・親友の名前は***、兄さんの名前は×××




「×……麻衣」

 うっかり素で友人の名前を呼びそうになり、訂正する。×××曰く、この世界の探偵と名の付く輩は総じて耳敏い傾向にあるので、迂闊な発言はとてもヤバいらしい。探偵でなくても公安だとかFBIだとか大女優だとか有名小説家だとかもヤバいらしい。恐らく、いや絶対に×××はそれらの個人名まで把握している。

 世界を越えたらひどく薄くなってしまった、けれども俺よりもずっと頼もしい肩に手を置くと、×××はこちらを見上げた。中身はともかく見た目は大人しそうな女子高生だ。とても押しに弱そうで(実際弱い)、何されても抵抗できなそうな雰囲気の(ただしとても生き汚い)。リドルが「犯罪に巻き込まれるモブの顔してる」と言って×××を怒らせたのは記憶に新しい。しかしここのところの事件巻き込まれ率は馬鹿にできないのも事実である。

 俺は震えそうになる手をぐっと堪え、年と性別が離れた友人という体裁の彼に告げた。

「今すぐ引っ越さないか、千葉に」

 そして俺と同居しよう。俺が住んでいる千葉は東京もとい東都よりずっと平和だ。以前×××に、千葉県警にも登場人物いるんだぜと恐ろしいことを言われたが、東都の人物分布よりマシだろう。少なくとも日本のヨハネスブルグとは言われない。その代わりに×××が日本のアーカムと揶揄する町があるが、そんな場所は行かなければいいだけだ。

「それ、もう6度目。あと孤児に理由のない軽率な転学と引っ越しは厳しい」

 ×××は生温かい目を向け、「返済不要の奨学金、超おいしい」と呟いた。俺とは別方面に彼は苦労しているのだ。しかし、俺が何故そういうことを言い出したかも心得ている彼は、俺がつい先ほどまで見ていた人物をちらりと窺った。

「今日も絶好調にヤバいのか?」

「ああ」

 視線の先にいるのは、眠りの小五郎と名高い毛利小五郎探偵とその弟子だ。金髪に褐色肌で同年代くらいに見える男を見るたびに、俺は比喩ではなく気分が悪くなる。それは彼自身が醜悪だからではなく、彼の周囲が異様過ぎるからだ。

「今日は爆処理っぽい人だからグロイ。帰りたい」

「ああ〜〜……」

 ×××が死にそうな声を出した。想像してしまったのだろう。俺の目には想像するまでもなく、“それ”はっきり映ってしまっているので非常に気分が悪い。要は、あからさまに爆死した人型を保とうとした何かが、気遣わし気に安室の傍に立っているのだ。怖すぎる。なお、たまに喋る。俺の次くらいには視えているリドルが、平然とした顔で安室を直視できる(近距離)のが信じがたい。しかもリドルの場合、その直後にレアのハンバーグを食う。俺の目の前で。あいつのメンタルと性格は本当にクソである。

 米花町も坏戸町も、犯罪率がとても高い。もっと言えば、江戸川コナンの周辺の殺人事件率はとても高い。そのせいで、霊視能力が高い俺にとってそれらの場所は完全にホラータウンだった。見た目と直感で生者と死者の区別はつくが、何をしていても視界のどこかに妙なものが徘徊しているのは嫌だ。×××がアルバイトに行く渋谷はそんなラクーンシティではないのに、何とも恐ろしい。同じく霊視能力を持つ霊媒師の原真砂子には、絶対に勧めたくないスポットだ。そもそも話す機会がほぼないが。

 ともかく、そんな中でも俺がトップクラスに会いたくないのは安室透だ。彼の周りには大抵、様々な死に方をした人物が日替わりでうろついている。穏やかな部類から原型留めてない部類までバラエティに富んでいるため、正直なところ顔を合わせたくない。いや視界に入れたくない。なお、一番マシなのは胸から血を流した顎髭の男で、「今日はスコッチの日だから心臓に優しい」と×××に囁いたら、両手で顔を覆った彼に「ネタバレもいいところだよバーロォ」と言われた。何故だ。

「ちなみに、今日も被害者視えた?」

 そっと安室から目を逸らした×××に問われ、俺は隠すことなく頷く。指で差さず、視線もあまり向けず、軽く顎で示す。

「今リドルと話してる男が犯人」

「またかよリドルの奴〜〜! あいつ分かってるだろ? 絶対視えてるだろ? なんで率先して話しかけにいくかなぁ!」

 人目を気にしてか、俺の陰に隠れて両手で顔を覆う×××。ぶつぶつと「犯罪心理学を実地で学びたいのか?」「いや類友?」と呟いている。色々と大変そうだ。俺はリドルの趣味と根性の悪さをよくよく理解しているので、いつものことだと最早気にもしない。あいつの知的好奇心はクソ汚い方向に振り切れている。なお本日の被害者は絞殺だった。その殺し方は見た目がとても気になるのでやめて欲しい。そもそも軽率に殺人に及ばないでくれ。

「あっ……」

 その時、俺は思わず声を漏らす。安室の傍にコナンが歩み寄ったのだ。ついほっと胸を撫で下ろす俺に、×××は何とも言えない顔をした。

「もしかしてグロイ人、消えた?」

「消えた。あれが主人公補正か」

「それは多分使い方が違う」

 静かに×××が突っ込む。それにしてもコナン効果は今日も素晴らしい。彼が誰かの傍に寄ると、そこにいた幽霊が穏やかに姿を消すのだ。離れたら戻って来るが。しかし一時的に祓われているという雰囲気ではなく、自然と息を潜めているとか、彼に場所を譲っているとか、そんな様子が強い。そう、死者は今のところ、一様にコナンに対して好意的にも見えた。感動した俺が「まるでファブリーズ浄霊スプレーだな」と言ったら、×××に「その例えはやめてさしあげろ」と強く止められた。何故だ。

 俺が安堵した気配を感じ取った×××は、半眼をコナンに向けた。

「さすがは光の魔人」

「ウルトラマン?」

「それは光の巨人な」

 ×××は「もしくは戦士」と言った。確かにコナンにカラータイマーはない。しかし、コナンの素晴らしくも不思議な力を何度も目にしているので、光の国からやって来た正義の戦士と言われても割と納得する自信はある。

「やっぱりコナンはすごいな」

「他とは全く違う方向で感心してんだよなー……」

 ほう、と感嘆の吐息を漏らす俺の隣で、×××が妙に疲れたため息を零した。



+ + +



紅子ちゃんの光の魔人発言を別方向に持っていく暴挙。
安室さんというか降谷さんの周りをうろうろしているのは純粋に心配されている模様。しかし死に様がそのままなので、親友のメンタルには非常に悪い。リドルは最早それは安室のオプションだと考えているので気にしない。イケメンパウダーの代わりに見た目がヤバい幽霊が漂っているようなもの。
多分、赤井さんもそれなりにヤバいし、ジンはヤバいどころじゃない。写真撮ったら100%心霊写真と化す。



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