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トム・リドルは英雄が気に喰わない
萌え 2018/04/15 16:07


・リドル視点
・現代日本とハリポタ世界を行き来しているリドルの話
・兄さんたちには詳しく言わないリドルの私生活(愚痴っぽく触り程度は話している模様)
・原作第五巻の時間軸
・兄さんの名前は×××、親友の名前は***





 リドルが×××の部屋とホグワーツを行き来するのに使う“出入口”は、必要の部屋に置いてある。寮の寝室に置くには大き過ぎることと、頻繁に出入りするのを見られたくないこと、そして何より材料を勘繰られたくないことが理由として挙げられる。いずれホグワーツを卒業するので、心おきなく“出入口”を安置できるセーフハウスの確保が必要になるだろう。最近のリドルの専らの関心ごとは、如何にして条件に見合う快適な場所を確保するかである。抜きんでた美しい容姿と優れた頭脳、見せかけとはいえ性格も良いリドルは、良くも悪くも他人の関心を惹きやすいので、誰にも知られずに探すのは骨が折れるのだ。

 ちなみに、物件探しの邪魔になる鬱陶しい蝿筆頭はハリー・ポッターである。リドルは心の中でクソメガネかモジャメガネと呼んでいる。ダンブルドアも油断ならない老人だが、本来ならばハリー・ポッターよりも警戒すべき彼はむしろ、現在のリドルに好意的な側面を持っているので筆頭ではない。その感情は唯一、50年前のトム・リドルと現在のトム・リドルを見つめ、差異を知るからだろう。リドルとしては「知った気になるな」と吐き捨てたいところだが、今のところリドルの邪魔をする気配はないので実際に口にはしていない。口にしたところで笑って流されそうな雰囲気があるのがまた忌々しい。あの老人は、いつだって他者とは一線を画した眼差しでリドルを見下ろしている。

 一方、ホグワーツ一年生の頃からダンブルドアの薫陶を受け続けたハリー・ポッターは、正義感の強いクソメガネに成長した。実に残念である。日本人的な表現で言えば、遺憾の意を表明したい。入学したての頃は、成育歴の割に年相応に育ったその辺のガキという風情だったが、毎年のように舞い込むトラブルを経て、ダンブルドアが望むような英雄としての道を歩みつつある。(元からの素質もあるだろうが)だからこそ、ヴォルデモート卿との繋がりがあると疑わしいリドルが気に喰わず、目の敵にしている。当然、事あるごとにリドルを監視するような眼差しをしていた。

 リドルとしても、自分を嫌う相手に好意を向けるほど物好きではないので、ハリー・ポッターが気に喰わない。年相応のハリー・ポッターに×××のような性格と言動を期待していたため、それを派手に裏切られたという一方的で身勝手な動機もあるが、それを抜きにしても気が合わないと判断していた。そもそも、策謀を巡らすことを好むリドルに、直情気質な彼は水と油なのだ。……という自己分析を×××に話せば、「お前も中身は結構直情的だぞ」というツッコミが入るのだろうが、外面が一級品であると自負するリドルが聞き入れることはないだろう。

 現在のハリー・ポッターはリドルにとって、毎年何かしらの面倒事を起こす問題児という印象が強い。今年は魔法省から派遣された教師の教育体制に反旗を翻すべく、陰で賛同者を集めて勉強会を開いているらしい。集まりの名前がダンブルドア軍団と聞いた時のリドルの感想は、阿呆の一言に尽きる。結局ホグワーツ高等尋問官殿にバレ、ダンブルドア批判の種に使われたようだ。ざまあみろ。

 しかしながら、軍団の連中が必要の部屋を出入りしていたのは迷惑極まりなかった。リドルは彼らに悟られないように必要の部屋を出入りする必要が生じたからだ。彼らの中の誰かに一度でも姿を見られてしまえば、ほぼ確実にハリー・ポッターに話が行くだろう。そしてリドルは彼に執拗につけ回される羽目になる。リドルは×××から、ハリー・ポッターが本物の“透明マント”を所持していることを聞いている。それを使われてしまえば、さすがのリドルでも追跡を撒くのは困難を極めるだろう。

 リドルは、自分が見つけたあの異世界に、自分以外の誰かが足を踏み入れることを断固として許せなかった。万が一、あからさまに魔法使いの格好をした誰かが×××の自宅に現れても、無駄に図太い彼は苦笑一つで収め、辞書片手に会話を試みるかもしれない。もしその場に×××よりはお人好しでない***がいたとしても、なんだかんだで親友を一種のフィルター扱いしている節のある彼は、×××が友好的に接しようとする相手を無理に拒絶することはないだろう。それらがリドルには許容できない。リドルは特別な人間でありたいという意識が強い。恐らく世界で唯一、別の世界を自由に行き来できるという事実は、リドルの優越感や矜持といった感情を満たしていた。ヴォルデモート卿にすら勝っているそれを、好奇心や正義感などで踏み荒らされたらリドルは何をするか自分でも分からなかった。

 申し訳程度にO.W.L試験の勉強をしながら物件探しをする。たまにハリー・ポッターとの接触を避けながら異世界に渡り、息抜きをする。それが最近のリドルの行動だ。加えて、アンブリッジから尋問官親衛隊に何度も勧誘されるので、口先で誤魔化して上手く断ることも挙げられる。親衛隊の特権も寮の点数稼ぎも全く価値を感じなかったのだ。なお、アズカバンから死喰い人(デスイーター)が10人脱獄したというニュースも流れたが、リドルは興味一つ示さなかった。この世界のヴォルデモート卿やその部下が何をしようが、自分の行動に支障をきたさなければどうでも良かったのである。仮に手元に分霊箱があったとしても、捨てるか放置するか破壊するかのいずれかだろう。リドルには彼らに対する仲間意識が欠片もなかった。

 スリザリンの談話室で最新の警備魔法の雑誌を読みながら、リドルは物思いに耽る。快適な住まいも重要だが、身を立てる就職先も気にしなければならない。リドルの成績と(表向きの)素行ならば、エリート路線で魔法省に就職するのも可能だろうが、ヴォルデモート卿周りの事情で面倒事に見舞われるのが目に見えている。それに高給取りだが拘束時間が長い。あくせくと働くよりは趣味に没頭したいので、収入面と地位以外は好ましくない選択肢だろう。何か都合の良い仕事はないだろうか、とリドルはある意味贅沢な悩みを持っていた。×××が知ったらどつきそうなくらいには贅沢であった。

 優雅な仕草で紅茶を啜るリドルの視界の端で、ドラコ・マルフォイがそわそわとこちらを見ているのに気付く。どうせ、尋問官親衛隊に勧誘したいのだろう。一部の間ではともかく、ホグワーツでは一般的に品行方正・成績優秀・容姿端麗なリドルと交友関係にあるのはステータスの一つと数えられているので、彼もリドルを仲間に入れたいのだ。今度はどうやって断ろうかと考えながら、リドルはティーカップをソーサーの上に置いた。



+ + +


兄さんといると忘れそうですが、リドルは恐ろしくハイスペックなイケメンです。魔法界だと二週目なので、現代日本にいるときよりもハイスペックに磨きがかかっています。ドラコもフォイフォイされちゃう。

あと、“出入口”の材料は魔法省で管理されていた死のベールです。リドルは兄さんの私物である異世界の教科書を持っているので、それを通行証代わりに異世界に渡れます。それがないと普通に死にます。通行証を持っていれば、ベールの向こう側の行き先を選べる感じです。
リドルは神秘部からしれっと死のベールを盗んで私物化しているので、実はシリウスが死なない世界線になる可能性があったりします。可能性というだけで、映画版のようにベラトリックスのアバダでお亡くなりになることもあり得ますが。この事実を英雄さんが知ったらものすごくしょっぱい顔になる。

分かりづらい本日のリドルさんのデレ:承認欲求が強いくせに、異世界を行き来できる僕スゲーという事実をひた隠しにしていること。兄さんに話せば速攻で「あ、コイツ自分の名声とか承認欲求満たすよりも、俺たちと友達付き合いする方選んだんだな」と悟られますが、話さないのでバレない。ちなみにリドルは無意識。


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