更新履歴・日記



まあこうなるわなの続き
萌え 2017/11/29 22:58


・ゾル兄さんがコナン世界に突っ込まれた続き
・案の定事件が起こったのでござるの巻





 毛利小五郎ご一行がいらっしゃった翌日。料理人の一人が自室で首を吊って亡くなっているのが、同僚によって発見された。早速である。死神先輩仕事しスギィ! 普通は自殺かと思うが、同じ敷地内に小学生探偵がいるだけで殺人事件にしか思えない不思議。いや不思議でも何でもない。どうしてこの世界の人間は、特定の人間が傍にいるタイミングで凶行に走りたがるのか。そういう意味では逆に、古畑任三郎シリーズは犯人視点なので異色の面白さがあるが。今の俺? 古畑任三郎シリーズの犯人の心境だよ! 料理人のおっさんの死因には一切関わっていないけどな!

 朝っぱらから響く目撃者の悲鳴を聞きつけて現場に駆け付け死体発見、現状保存に警察への通報および関係者の囲い込み、と探偵様ご一行による流れるような作業のスピード感には戦慄しか覚えない(蘭姉ちゃん除く)。内2名は元敏腕刑事と現役お巡りさんといえども、手慣れ過ぎじゃないですかねと言いたい。発言して目立ったら死亡フラグが一本増えるので言わない。もう生えてるのにこれ以上生やしてどうする。ドМか。SМは互いへの愛情がないとただの拷問だぞ。

 しかしここでトラブルが起きる。旅館は山の中腹にあるのだが、そこから外部へ繋がる山道が土砂崩れを起こして通行止めになってしまったのだ。ギャグかよ。積極的に陸の孤島を製造していくスタイルの死神パイセンの運命力には脱帽するしかない。犯人(仮)は旅館から脱出不可能になった上に探偵組と一緒に缶詰コースを強いられることになったのだが、何故か俺まで苦行を強いられている気がするのは気のせいではないだろう。俺は修行僧ではないのでご遠慮させていただきたいのだが。ハンター世界の秘境ならともかく、現代日本の山の一つや二つくらい、真冬でも丸腰で踏破する自信があるので逃げることもできるが、このタイミングで逃げ出したらそれこそ怪しまれる。探偵組がいるので最終的には犯人扱いされないだろうが、何かしら後ろ暗いことを抱えている奴認定される。

 案の定、コナン少年(自称ただの小学生)の鋭すぎる観察眼と、安室青年(自称毛利探偵の弟子)の推理により、自殺ではなく他殺であるとされた。おいハイスペック共、小五郎のおっちゃんをヨイショして誤魔化しても、お前らがやったことは変わらないからな。

(まあ、探偵組がいなくても、自殺とは思えなかったけどな)

 被害者の男性は中年に手が届く程度の年頃で、新参者の俺によくしてくれる人だった。ゆくゆくは自分だけの店を持つのが夢だと聞いた。もう少ししたら旅館を離れ生まれ故郷の田舎で独り立ちする予定で、随分前から予算を組んで貯金を積み立て、物件の下見も何件かしていると話してくれたこともある。そんな希望に満ち溢れた人が自殺するわけがないと思うのは当然だ。

 事件が起きた時の定番と言えば、一カ所に集まっての事情聴取、というか話し合いだ。トラブルが起きれば全員が一カ所に集まるのはごく当たり前の行動だ。そのメンバーの中に著名な探偵や頭の切れる奴が混ざっているので、素人同士の好き勝手な推測や決めつけが多少鳴りを潜め、事情聴取の体裁を保っている。

 ……保っているとは思っていたが、職員の中で俺が一番吊るし上げを食らいやすい立場だということがすっかり頭から抜けていた。

「新入りがやったんじゃないか?」

「――はい?」

 大広間に集まった面々を、ドラマや漫画を見る気分で眺めていた俺は、ふいに疑念が込められた声を向けられたことに気付いた。声を掛けた男に目をやると、若い職員の男が胡散臭そうな目をして俺を見ているのが分かる。ついでに、聞き込み中の毛利探偵とその弟子、ついでにちゃっかり彼らの傍にいる小学生探偵までこちらを見ていた。俺の(防弾)ガラスメンタルが砕けるのでやめて欲しい。野郎共の熱視線は心底いらない。

「あの人は金を貯めてた。そいつはそれを知って、金目当てで殺したんじゃないか?」

 その男は、俺を雇うことに乗り気ではなかった。身元が分からない無一文の怪しげな男なのだから、当たり前の反応ではある。旅館の旦那さんがあまりにもいい人過ぎたのだ。いい人過ぎるから、彼を大事に思う周りの人間が彼の代わりに俺を疑うのだ。

「そいつは無一文でここに転がり込んで来たんだ。誰よりも金が欲しいだろうよ」

(無一文で転がり込んだのは異世界ですってな)

 金が欲しいのは確かなので、内心で苦笑する。俺は私情で殺人をしないと決めている。それが暗殺を家業とする俺の、最低限の自尊心を守る取り決めだ。だが仮に金目当てで殺人をするつもりなら、わざわざ自殺に見せかけたりしない。なにせここは山の中だ。念能力と身体スペックをフル活用してひそかに被害者を外へ連れ出し、首を捩じ折るなりして血を流さず殺し、埋めてしまえばいい(※なお、探偵組が敷地内にいない場合に限る)。

(……なんて言い訳、できるわけねーじゃん!!)

 言ったが最後、頭がおかしい人扱い待ったなしである。信じられても困るし、信じられなくても面倒だ。

 探偵組以外の周囲の視線も集まる。疑惑の視線を独り占めしても全く嬉しくない。俺は困惑した表情を作って彼を見た。

「違いますが」

「信じられる理由がないんだよ」

「はあ」

 何にせよ、やった証拠もやっていない証拠もないので水掛け論だ。そして信じる信じないの問題ではないが、俺は特に反論するでもなく生返事をする。だが、毛利探偵の問うような視線に気づいたので、軽く会釈した。

「俺は類(るい)と言います。最近、旦那さんに雇ってもらってここで雑用のアルバイトをしています。新入りなので、疑われても仕方がないですね」

「疑われている割には随分堂々としているじゃねえか」

「どんなに疑われても、やっていないものはやっていないので」

 片眉を上げる毛利探偵に、俺は肩をすくめて見せた。

「それに、ここには都合良く名探偵がいらっしゃっていますから。毛利探偵はきちんと真犯人を見つけ出してくれるでしょう? 自分が犯人でないのなら、慌てる必要なんてありません」

 実際、それが本音だ。犯人を見つけ出すのは小学生探偵や自称弟子だろうが、彼らがいる以上は正しい真実に着地するだろう。その過程でうっかり余計なことまで知られなければいいだけで。

(公安って、隠し物を探すのがやたらと上手かったりしないよな?)

 例えばナイフと毒薬の隠し場所とか。……ある意味、自殺の偽装よりヤバい物じゃなかろうか。

 それでもこんなに落ち着いているのは、俺がゾルディックとして生きてきたからだろうし、犯人扱いされたりヤバい物を見つかったとしても、いざとなったら逃げられるという自信があるからだろう。俺はいつのまにアウトローな人間になってしまったのだろうか。あ、26年前ですよね知ってる。ゾルディック家なんて、黒の組織並みのアウトロー一直線じゃないか。いや、やっている内容は暗殺ばかりなので、黒の組織よりはマシ……なわけない。ゾルディック家も黒の組織も、やっていることは正義の探偵にしばき倒されても文句は言えないお仕事なのである。

 俺、こっちの世界ではまだ犯罪者じゃないけどな! ……アッ、銃刀法違反と毒劇法違反やらかしてたわ。



+ + +



こっちの世界でも既に犯罪者ですおめでとうございます。もしもの時に(ハンター世界で)備えていたら犯罪者になりました。
安全に毒物を処理する方法→いっそ自分で飲む。
暗殺一家も黒の組織もヤバいに決まってる。



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