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怪盗も相手を選ぶ
萌え 2017/10/30 00:27


・腐ったバナナ様のメルフォ話(麻衣兄さん×とうらぶ×コナン)に萌えた結果
・SPRが調査現場に行ったら、怪盗キッドが予告状を出した現場と被った悲劇
・審神者ゾル麻衣兄さん
・怪盗キッド視点





 人の行き来もそこそこある大きな屋敷とはいえ、初見でなかなか良い相手を見付けた、と思った。まず、背格好が似ている。よく観察すると相手の方が筋肉の付きが良いが、簡単に偽装できる程度だ。肌が褐色なのは面倒だが、真似できないということもない。肌の色を変えるなどいつものことだ。何より素晴らしいのは性格だ。どうやら彼は一匹狼の性質らしく、集団でいるのを好まないらしい。「群れるつもりはない」と、隣にいる少女にぶつぶつと呟いているのを聞いた。口数も表情も乏しく、だからこそ変装しやすい。無口で不愛想、一人を好み、単独行動を取っても同行者にさほど怪しまれない、それでいて同行者の少女を気にかけている高校生程度の青年。そんなところだろう。

 そう推測した黒羽快斗――世間では怪盗キッドと呼ばれている彼は、ターゲットが少女から離れ、一人になるタイミングをじっと待った。もちろん、その間もこそこそと物陰に隠れるのではなく、警備員の一人に成りすましている。警備員に紛れるやり方は常に有効であるが、この現場にいるあの少年にはとっくに知られた手段でもある。警備員に紛れたと見せかけて別の人間に成りすます。しかもその人物は、どうやらあの少年や警察とは別の集団――SPRというらしい――に庇護されている。そう簡単に手が出せないだろう。

 快斗はとても頭が切れる。手先は器用で要領も良い。勝負で引き分けることもあるが、それはほんの一握りの相手だけだ。だからこそ油断した。否、油断はしていないが、想定の範疇を超えた相手との遭遇を考えていなかった。そして、自身が接近戦は得意ではなく、身体能力が優れた相手とはとてもやり合えないことも。

 一人で廊下に出た青年をそっと追跡し、ひと気のない場所で意識を奪おうと背後から襲い掛かろうとした瞬間。

「――は?」

 思わず間の抜けた声が快斗の口から漏れる。ほんの瞬きの間であった。まさにその一瞬後、快斗は真正面から鋭い双眸を見ていた。どんなカラコンを使えばそんな色になるのか、自然でありながら美しいとしか言いようのない金色である。つまりは――“こちらを見られている”。

「誰だ」

 端的に問う言葉を投げかけられ、襲おうとした体勢のまま快斗は硬直する。弁解するには状況が許さず、かと言ってこのまま気絶させんとしようにも何故か上手くいく気がしない。

「俺を見ていただろう」

 一度も目が合った覚えはないが察しているなんて、漫画か。そんなことを内心で呟くも、快斗が青年を観察していたのは事実なので反論できない。したところで無駄だと確信する雰囲気だ。

「何が目的だ」

 お前を気絶させて成りすますためだ、と馬鹿正直に告げるほど命知らずではない。そう考えたところで快斗は、自分の命がいつの間にか風前の灯火であったことに“ようやく”気付いた。

 快斗の首筋から数pも離れていないだろう。その位置に、蛍光灯の明かりを受けて煌めく白刃があった。刀身には剣に巻き付いた竜――倶利伽羅が彫られている。特徴的なその刀は大倶利伽羅広光だったか、と知識から引っ張り出した快斗は、背筋を凍りつかせた。芸術的な美しさを持つ“刀”が自分の首筋に添えられているということは、青年次第で快斗の首がぱっくりと斬れてしまうということである。模造刀だろうと考えるには、あまりにも刃が鋭く見えた。

(コイツ、いつの間に刀なんて出した!? さっきまで手ぶらだっただろ!)

「答える気はないのか」

 腕利きの魔術師(マジシャン)と自負する快斗が驚愕している間に、青年は結論を出したようだ。美しいが鋭い双眸が細められ、研ぎ澄まされた刃のような気配に圧倒される。本当に斬られるのではないかという焦りから、快斗は慌てて口を開いた。

「待ってくれ! あんたを害するつもりはない!」

 緊張と恐怖で口蓋に張り付く舌をどうにか剥がしつつ弁解する。気絶させるのは十分害しているが、今はそんなことなどどうだっていい。この男は危険だ。快斗は完全に相手を間違えた。一刻も早く、この男から離れなければならない。ようやく回転を始めた頭で考えてみれば、そもそも快斗はこの男に誘い出されたのかもしれなかった。なにしろ、快斗が見ていたことに気づいていたようなので。

「目的は」

 嘘は通じない。そう直感した快斗は、観念して口角を吊り上げた。下手な笑みだが、浮かべた方が心に余裕を持てる。マジシャンは、客には笑顔を向ける生き物なのだ。

「予告状を出したお嬢さんを迎えにね」

 ウインクしてそう告げると、青年の表情は剣呑なそれになった。子どもなら泣き出すに違いない。

「お嬢さん……?」

(ってヤベッ! 表現がマズかったか!)

 思い出してみれば、青年の連れは少女であり、しかも一匹狼気質と思しき彼が気を遣うほどの相手だ。怪盗流にしても、お嬢さんという表現はやめておいた方が無難だった。嘘が通じなければ冗談も通じない男である。

「アンタの大事なお連れさんじゃない。厳重に守られている宝石さ」

「ああ……」

 そう説明すると、青年は納得した声を上げた。

「お前が派手好きの鼠小僧か」

「何百年前の怪盗だよ!?」

 世間を騒がす怪盗キッドの名前の前に、200年前の怪盗の名前が出るとはさしもの快斗も思わなかった。状況も忘れて突っ込んでしまった快斗は内心でヒヤリとしたが、青年も毒気が失せたのか刀を納めた。鞘に収まったそれは、やはり見れば見るほど伊達政宗の刀として有名な大倶利伽羅広光にしか思えない。レプリカにしては随分精巧だ。快斗は専門家ではないのでそれ以上のことは分からないが、もしかすると本職の鑑定士の目すら欺けるのではないかと思える一品だった。青年の持つ刀が偽物だと断ずる理由は単純だ。本物の大倶利伽羅広光は個人所有の刀とはいえ、こんなところに気軽に持ち出されるものではないからだ。重要美術品が持ち出されれば、大なり小なり必ずニュースになる。

 妙に出来のいい刀を持つ青年は、ため息をつくと先程までの雰囲気を霧散させた。

「もういい。どこへでも好きに行け」

「……いいのか?」

 この場を離れたいと思っていたとはいえ、こうもあっさり放り出されると拍子抜けする。つい快斗が尋ねると、青年は淡々とした眼差しを向けた。

「探偵も警察も俺の仕事じゃない」

 仕事ではない(管轄外)だから見逃すというのは豪快に過ぎるが、好都合である。快斗から完全に興味を失った眼差しに嘘はないように思える。

「だが」

 そうして安心しかけた快斗の胸中に、青年が一振りの刀を突き刺した。

「相手は選べ」

(こ、こえぇ〜! あのお嬢さんに手を出したらぶった斬られるな)

 全身に冷や汗を掻きながら、快斗はそそくさと警備会場に戻ったのだった。

 その後。別の人物に成りすました快斗は、偶然にも警備会場であの少女と目が合った。やはり褐色肌の青年の隣にいる彼女は、快斗と目が合うとにっこりと笑う。ちらりと意味ありげに傍らの青年を一瞥して見せた少女は、人差し指を小さな唇の前で立てた。次いで「ないしょ」と音なき声で言われた快斗は、思わず天を振り仰ぎたくなった。

 ――類は友を呼ぶ、ということかもしれない。



+ + +



怪盗キッドの身長は174p、大倶利伽羅の身長は175pということで変装はしやすそう(させてもらえるとは言ってない)。
DK怪盗とJK暗殺者の内緒話とか中二病の極み。
報道を嫌うナル君が調査現場で大規模な怪盗キッド包囲網とかち合ったら、ものすごく嫌そうな顔するだろうなと思いました。きっと、今までの比ではないほど嫌そうな顔をするに違いない。怪盗キッドと会ったら「仕事の邪魔です。お帰りください」とか言いそうだし、コナン君たちとも必要以上の接触は避けそう。本名隠してるご身分なので、根掘り葉掘り探ってくる探偵とか本気で嫌だろうな。とりあえず女子高生の戸籍持ってる兄さんは良かったね。ゾル兄さんのままトリップしていたら、最悪だと住所不定無職の男になってたよ!



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