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審神者ゾル兄さんと短刀
萌え 2017/07/12 01:05


・審神者ゾル兄さん
・捏造設定ばかり





 俺が審神者になった理由は、あくまでも異世界日本とハンター世界を繋ぐ門を守ることが第一である。歴史修正主義者との戦いに主力として参加することはあり得ない。その代わりに遊撃部隊として、苦戦を強いられている他本丸の刀剣男士の加勢をすることはある。そして――ごく稀に、防衛戦まがいのことをすることもある。

 本丸には様々な種類がある。通常の本丸は過去の日本の地名を借り受け二十以上のグループに分かれており、俺も表向きはそのうちの一つに所属している。実際の俺の本丸はそれ以外の特区、重要拠点の一つとして分類されている。いくつかある重要拠点がそれぞれ“どう重要なのか”は俺も知らない。俺は俺自身の拠点の特異性を知るのみだ。そして歴史修正主義者率いる遡行軍も、ある程度は特区の存在を知ってはいるらしい。そのため、どうにかして通常の本丸や、それを通じて特区の本丸を探り、攻め滅ぼそうとしている。

 もちろん、その対象に俺の本丸がほんの少しの可能性でも含まれる場合は、俺が直々に潰しに行くのだ。

 今回は通常本丸に攻め入った遡行軍が、そこを拠点にさらに攻め上がろうとしているらしいという情報だった。俺は一部隊を引き連れ、未だ戦闘中の本丸に政府を通じて移動する。俺は異世界日本に行くことはできないが、政府が道を開けば演練会場や他の本丸に行くことができるのだ。

 本丸に足を踏み入れた途端、嗅ぎ慣れた血臭が鼻をついた。同時にあちこちから剣戟の音が響いてくる。次いで、目の前に黒い塊が過ぎった。それはこの本丸の打刀で、同田貫正国(どうだぬきまさくに)だった。他の刀剣男士に比べて比較的短い黒髪に黒尽くめの彼は、色のせいで分かりづらいがそこそこ手傷を負っているようだ。それでも黄色の目は戦意を全く失っていない。眼光鋭くこちらを見た彼は、俺たちが敵ではないと一瞬で判断したらしい。すぐさま視線を戻し、猿叫(えんきょう)と呼ばれる声を上げて遡行軍に斬りかかった。

 俺はこちらに斬りかかってくる遡行軍の露払いを連れてきた刀剣男士に任せ、オーラを広げた。念能力者だけができる特殊な索敵だ。無論、ゾルディックで暗殺者として教育された俺はオーラに頼らずとも気配だけで索敵できるが、やはりオーラを使った方が精度が上がる。

(遡行軍の大将格は……あれかな)

 やはり目途は簡単につけられた。そもそも事情が事情なので一兵たりとも残さず鏖殺(おうさつ)するつもりだが、万が一にでも頭に逃げられるのはまずい。戦術的にも頭を素早く潰して残敵を掃討する方が都合が良い。だから今回はほんの少しだけ俺が手を出す。

 俺は両手をわずかに背後へ下げた。

「前田君、平野君。――本体を」

 俺が何をするのか理解していたのだろう。黒い制服を着た二刃の少年が、俺の両脇に素早く控えて自身の本体――前田藤四郎と平野藤四郎を両手で捧げ持った。

「どうぞお使いください、主君!」

「芯鉄になろうとお仕え致します!」

 俺が彼らから後ろ手で本体を受け取ると、彼らの肉体は桜の花びらと化して散り散りに吹き飛ぶ。刀剣男士の本体は、さすが付喪神を宿しているだけありとてもよく斬れる。遡行軍相手ではそれが顕著だった。だから俺はこういう時、好んで彼ら――短刀ばかりだが――を用いる。

 すると、それを見ていた鶴丸国永が敵の首を斬り飛ばしながら笑った。見た目は儚げな美青年の癖に、肉をついばむ猛禽類のような笑顔だ。

「全く、いつ見ても羨ましい限りだ! たまには俺も使って欲しいものだな」

「生憎、太刀は専門外だ」

「本当は西洋の短刀以外は専門外だろう? つれない主だ」

 そう言われたところでどうしようもない。俺は軽く肩をすくめ、そして切り替えた。暗殺の仕事をする時の――ルイ・ゾルディックの自分として。

「事前に言った通りだ。策はない。俺が大将格を潰す間、この本丸の刀剣男士と審神者に加勢しろ。それから、これは殲滅戦だ――逃がすなよ」

 言い終えると俺は“絶”をし、自分の気配を限界まで消した。同時に、目標に向けて地を蹴る。相手の意表をついて確実に殺すのが流儀だ。ゾルディックの暗殺成功率は100%。ハンター世界でなくともそれは変わらないのだ。



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