更新履歴・日記



ジョジョテロの方へ捧ぐ
萌え 2017/03/23 00:45


・親友がエリナに成り代わった場合
・親友視点
・原作でジョナサンとエリナが初めて会うシーン(うろ覚え)
・ジョナサンは兄さんが成り代わっている
・親友の名前は***、兄さんは×××





 彼女の記憶は齢一桁から薄っすらとした始まりを迎えていた。ただ、それに強引に割り込んできたであろう俺の20年と幾許かの記憶の方が遥かに強く、彼女の記憶は俺の中でただの記録となった。そうして目覚めたのがエリナ・ペンドルトンという少女の体と、□□□***という青年の意識が混在した人間だった。

 俺が俺であるという意識を覚醒させた瞬間は、彼女が近くに住んでいる悪ガキ共に苛められている最中だ。彼女は親から与えられた人形を外に持ち出すほど気に入っていたようだが、それを少年たちに取り上げられたのだ。彼女と同年代の少年たちは小学生くらいだろう。現代日本人の俺から見ると古めかしい作りの人形を戦利品のように掲げ、こちら(彼女)を囃し立てている。残念ながら俺が状況を理解した瞬間には、エリナとして存在している人間からその人形に対する執着の一切は消滅していた。当然だ、その人形は俺のものではなく、エリナの物だったのだから。

 そもそも、人形が取り上げられたことを嘆くより、エリナという少女になっている自分の現状を嘆くべきだった。恐怖するべきだった。それでも俺の中に残る彼女の記録と、一欠けらの思いが俺を動かした。

 ――人形を、取り戻す。

 こちらは一人で相手は二人。不利だ。しかしながら俺は武道経験者。ド素人のクソガキにしてやられるはずもない。動かす体こそ他人のものだが、油断しているガキを黙らせる程度なら困らない。

 俺は人形を取り戻そうとして一直線に腕を伸ばす。自分の腕の細さと短さに驚いたが、無視する。人形を持つ少年が腕を高く掲げ、もう一人が俺を払いのけようとこちらに腕を振るった。だが、そんな行動など読み切っている。俺はこちらに振るわれた腕の動きに逆らわず、その力を利用して少年の腕を掴んで強く引き、体勢を崩させた。さらに、俺の横に向かって倒れ込みつつある少年の背中に肘を落とす。少年はグッと呻いて地面に蹲る。次いで俺は人形を掴んでいる少年の胸倉を片手で掴んだ。その手を掴もうとする手を逆に掴んで捻り上げると、痛みで悲鳴を上げる少年を地面に引き摺り倒した。起き上がろうとする背中を容赦なく踏みつけ、その手から人形をもぎ取る。悪いのはこいつらだ、ガキとはいえども多少は痛い思いをすればいい。

「他人の物を盗んで粋がるな、クソガキ共」

 背中の上から足をどけてやりながら、彼らを鋭く睨み付ける。今の俺がどんな顔立ちなのか分からないが、それなりに威力はあったらしい。少年たちはひゅっと息を飲み込んだ。大した怪我はさせていない、このくらいはいい気味だ。

 実のところ俺は、ここまでやっておいてようやく自分が自分以外の子どもになっていることを理解した。頭の中の記録と自分の現状を照らし合わせる作業は未だ不十分で、自分がエリナ・ペンドルトンの体になっていることへの実感が薄かったのだ。深く考える前に直感でクソガキ共を叩きのめしたのだから当然だろう。今思えば、それは僥倖だったと言える。他人の体で異世界に突き落とされた絶望を一人で味わい、動けなくなってしまう前に、すぐ傍に道連れがいることに気づけたのだから。

 ふと俺が顔を上げると、近くに生えている木の陰から、育ちの良さそうな少年がこちらを見つめているのに気づいた。俺の親友がいつだか、「面白い顔だろ?」と見せてきた画像―−チベットスナギツネのしょっぱい表情と似ている。こちらに声をかけようとしていたのかもしれない、中途半端に伸ばされた片手が妙に寂しげだ。

 光の加減で深い青にも見える黒髪の少年は、困ったように、というよりも呆れたような、もしくは諦めたような声を上げた。

「……いやお前、***だろ」

 ――どうやら、彼は姿こそ違えど俺の親友らしい。唐突に異世界とやらに放り込まれる経験が以前にもあったためか、その答えを弾き出すのに躊躇はなかった。

 俺は「どうしてこうなった」と遠い目をしている親友の両肩を掴んだ。掴んだ瞬間、「あいつ、ジョースターに掴みかかったぞ!」「殺す気だ!」と叫んで逃げていくクソガキが視界の端に見えた。殺すわけないだろ、馬鹿か。それにジョースターって誰だ。そういえばクソガキ共も目の前の親友も欧米人の顔立ちだが、ここはどこだろうか。――エリナの記録はここがイギリスだと告げている。なんだ、日本ですらないのか。いや、ともかくは目の前の彼だ。

「お前、×××か?」

 記憶よりもかなり細く、しかし今の俺の手にはやや大きい肩を掴みながら尋ねると、目の前の少年は懐かしい苦笑を浮かべた。

「そうだよ。そうだけど……うわあああ」

 しかし、苦笑はあっという間にげんなりとした表情に変わる。どうしたのだろうか。彼は俺より遥かにタフな精神力の持ち主だが、俺よりも感情表現が豊かだ。いつもと変わらない彼の様子に、波打っていた俺の心が少しずつ安定を取り戻す。だが、続けられた彼の言葉で、俺は再び自分の現状を見つめ直すこととなった。

「お前、その、大丈夫か? つまりあの、心とか、男の尊厳とか、いろいろと」

 俺は彼の肩から手を離し、自分の両手を見つめた。白い。白人の肌だ。だが青色やら緑色ではなかったのでひとまずよしとする。次いで自分の頭に手をやった。髪が長い。元から長めの髪だったがとんでもなく長い。掴んでみると金色であるのが分かった。だが蛍光色やらハゲではなかったのでよしとする。さらに自分の胸を鷲掴んだ。いや、掴もうとして失敗した。平たい。それなりに鍛えていた胸筋が更地と化している。だが脂肪はついていないのでよしとする。最後に股間に手をやった。……なかった。何もなかった。無言のまま、履いていたらしいロングスカートをたくし上げようとしたところで×××に止められた。彼は無言で首を横に振る。セリフをつけるとしたら「残念ながらご臨終です」だろうか。

 ×××は沈痛な面持ちで告げた。

「大丈夫じゃないのは分かった。お前に何かあったら俺が面倒見るから、ひとまず現状を把握しよう」

 彼は俺の様子を見て、俺がたった今、少女になってしまったばかりだと察したのだろう。やたらと頼もしく見えた。



+ + +

兄さんが親友の内心(地の文)を知ったら、それなりに突っ込みどころが多いかもしれない。
兄さんは女体化()した親友をほったらかしたら、メンタルが相当ヤバいことになると察していると思います。本格的にSAN値が激減する前にフォローしようとしてます。



prev | next


×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -