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TOAでもお兄さんと一緒:キルア編
萌え 2013/11/24 18:03

・キルアがTOAにinしたようです
・中盤くらいで場所不明
・アッシュもいるよ





 ルイの弟として紹介されたのは、アニスやイオンと同じ年頃の少年だった。蒼白い銀髪を奔放に跳ねさせた姿は、一見すると活発そうなので、穏やかな風情の兄とはあまり似ていない。だが整った顔立ちや兄と同じ色の猫目、そして冷静な佇まいはルイとそっくりだ。不思議な形の長袖に短パン、そして不思議な形の靴を履いている彼は、両手をズボンのポケットに突っ込み、斜に構えている。どことなく、生意気そうな雰囲気がした。

「は? 軍人? こいつらが?」

 案の定、兄からジェイド達軍人組を紹介された少年――キルアは、胡乱げな目で彼らをねめつけた。

「何か文句でもあるんですかぁ?」

 生意気な物言いに苛立ったのか、アニスが刺々しさを覗かせながら尋ねる。するとキルアは、口の端を歪ませて、挑発的に笑った。

「別に? ただ、軍人ってすっげー弱いんだと思っただけ」

「はあ? 何それぇ!?」

 不遜な言葉に、アッシュも何か言いかけたが、その前にアニスが叫んだので口を噤んだ。彼は気が短いが、それ以上に短い誰かがいると何も言えないらしい。

「キル」

 咎めるようにルイが呼んだが、キルアは意にも介さなかった。

「だってマジでこいつら弱いじゃん。つーかオレより遥かに弱いし」

 アニスは「けっ」とガラが悪く半眼になると、げんなりと口の両端を落とした。

「お子様の癖になまいきー」

「ガキなのはお前の方だろ」

「むっかー!」

 だがキルアにあっさりと言い返され、アニスは両手に拳を握って怒り狂った。彼女はキルアを行儀悪く指差すと(人に指を差すのは行儀が悪いと、ルークは屋敷で怒られたことがある)、ルイに言い募った。

「お兄さんと違って、弟の方は超ムカつくんですけど!」

「うちのキルアが悪かったな」

 ルイは殊勝に謝ってみせるが、そのルイの隣でキルアがアニスに対して嘲笑っているので、あまり効果はないようだ。アニスは相変わらずキルアに対して憤慨していた。

 だがその時、ティアがおそるおそる口を挟んだ。

「……でも、“あの”ルイの弟よ? もしかして、本当に強いのかもしれないわ」

「まっさかー。口だけだよ絶対!」

 アニスはそう言って笑い飛ばしたが、ルークはどちらかというとティアの意見に賛成だった。ルイだって、見た目は背の高い細身の青年だが、その実、軍人のジェイドや剣士のガイを遥かに凌ぐ怪力の持ち主だ。おまけに、猛将と謳われる六神将のラルゴよりも強い。その彼の弟なのだから、見た目通りの子どもとは思えなかったのだ。

 一方、ルークの隣で成り行きを見ているガイは、アニス寄りの考えらしい。キルアを見る彼の眼差しは、拗ねた時のルークを見るものと大差なかったからだ。……つまり、子どもを見る目だ。何となくむっとしたルークは、ガイに肘鉄をプレゼントした。不意をつかれて涙目になったガイが抗議してきたが、ルークは無視した。

 キルアはわざとらしくアニス、ティア、ジェイド、そしてアッシュを順番に眺めると、意地悪そうに笑った。

「……この中だと、アンタが1番マシかな。おっさん、オレと勝負してみる?」

 そう言ってキルアが見たのはジェイドだった。ジェイドはずれてもいない眼鏡の蔓を押し上げると、にこりと笑顔を浮かべた。

「遠慮しておきます」

 予想外の返事だったのか、キルアは虚を突かれた顔をした。そんな彼に、ジェイドはわざとらしく肩をすくめてみせる。

「いやあ、寄る年波には弱いものでして。若い人のお相手は、ぜひ若い人にお任せしたいですね」

「つまんねーの」

 あしらわれた形になり興が殺がれたらしい。キルアはつまらなそうな表情になって視線をジェイドから外した。だが、そんな彼をいつまでも野放しにしておくわけにはいかない男が居た。

「キル」

「いっ!?」

 ルイがキルアの片耳を掴んだのだ。ルイはそのまま弟の耳を引っ張り上げながら、半眼で言った。

「初対面の人間には、敬意を持って接しなさいって言ってるだろ」

「敬意なんか持てる相手じゃねーし……うわっ!」

 兄に叱られてもなお文句を言うキルアの首根っこを掴み、ルイは彼を犬猫のように持ち上げた。そしてキルアを、ちょうど自分を挟んで他のパーティメンバーとは反対側になる位置に降ろす。

「お前がそういう態度でいらない敵を作りはしないか、お兄ちゃんは心配なんだよ。お前、しばらく喋るの禁止」

「オレ、本当のこと言っただけじゃん!」

「お口にチャック」

「む……」

 ルイにむに、と頬をつままれると、キルアはぶすっとした顔で黙り込んだ。他の人間に反抗できても、兄にはあまり逆らえないらしい。すると、今まで言いたいことも言えずに燻っていたアッシュが口を開いた。

「……ふん。兄におんぶに抱っこか、口だけの屑が」

 アッシュにしょっちゅう屑と言われているルークは、「こいつ、屑って言うのが好きだよな」と他人事のように考えた。一方、言われた側のキルアはじろりと横目でアッシュを睨むと、あっさり兄の言いつけを破った。

「うるせーロイヤルストレートクズ」

「なっ」

 あまりにもぞんざいな返答に、アッシュは口をぱくぱくと開閉させる。口が悪い彼だが、似たような悪口で言い返された経験が乏しいのかもしれない。アッシュの珍しい様子とキルアの言葉に、ルークは思わず噴き出した。

「ぶふっ」

「レプリカァァァァ!」

 すると、すぐにルークの様子に気づいたアッシュが彼を怒鳴りつけた。オールバックにした赤い前髪が、全て逆立つのではないかと錯覚するほどの勢いだ。その鶏のような姿を想像したルークは再び噴き出し、アッシュに掴み掛られそうになったので、ガイを盾にして逃げた。

 その盾にされたガイだが、彼もまたアッシュとキルアを見て笑っている。ただ、その笑顔は妙に晴れやかだった。……実のところ、ガイはアッシュのことが嫌いなのかもしれない。アッシュは自分と同じように、ガイと親友だったのではないのだろうか、とルークはひそかに首を傾げた。

「まあ……」

 ところで、今までは成り行きを見守っていたものの、婚約者への暴言を聞いたナタリアは、自分の頬に手をやると、上品に驚いてみせた。

「確かにアッシュはロイヤル(王家)でストレート(髪が)ですわ。一瞬で相手の特徴を的確に捉えるなんて、素晴らしい才能をお持ちですのね」

 どちらかと言えば、元ネタはポーカーの“ロイヤルストレートフラッシュ”の方ではないだろうか。おまけに“クズ”の部分が綺麗になかったことにされている。そう思ってルークがキルアを見ると、彼は兄の陰から、呆れたような半眼でナタリアを見ていた。どうやらルークの考えの方が正しいらしい。キルアは「付き合ってらんねー」と言うと、ナタリア達の方にはそっぽを向いて、兄に背中を預けた。弟に凭れ掛かられたルイは、深い溜息をついた。

「ナタリア、それはちょっと違うと思うわ……」

 思わずと言った様子でティアが指摘するが、ナタリアは理解していないらしい。彼女は「そうですの?」と小首を傾げるに終わった。婚約者の天然なコメントを聞いたアッシュは、脱力して彼女の“ロイヤルストレート”案を採用した。ナタリアの前ではクズ扱いされるより、イケメンでいたいらしい。

 アッシュがナタリアのコメントに気を取られたお陰で、彼から逃れられたルークの耳に、ジェイドがからかい交じりに言った言葉が聞こえた。

「血は争えないんですねぇ」

「は?」

 ルイが眉をひそめると、ジェイドはにたりと嫌な笑い方をした。

「貴方この前、ヴァンを見て“ロイヤルストレートクズ”と呟いていましたよね」

 その言葉を聞いたルークは、思わずぎょっとしてルイを見た。そんなことは聞いていないし、ルイがそんなことを言うとは思えなかったのだ。

「さあ、そんなことあったかな?」

 ルークの視線の先に居るルイは、澄ました顔でジェイドを見ていた。その様子からは、ジェイドの言葉が嘘か本当かは分からない。

「似たもの兄弟に似たもの師弟ですか」

 ジェイドはそう言うと、くすくすと笑った。





***

 マンボウPが好きです。



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