クソミソな話
萌え 2016/05/21 00:34
・BL時空
・SPR事務所にて
・麻衣兄さん(魔術師)と親友とリドルが存在している
・親友は千葉の大学に通っている
イレギュラーズの大人組が顔を出しているSPR事務所。今日は所長から臨時協力者の打診をされたため、***とリドルがやって来ていた(リドルは協力する気ゼロだが)。ナル君とリンが手続き書類のためか所長室に引っ込み、偶然できた待ち時間中、唐突に***が口を開いた。
「……そうだ。結婚しよう」
「は? 誰が誰と?」
「俺がお前と」
「頭大丈夫か?」
***の隣でソファに座っていたぼーさんが茶を噴き出した。汚いので手に持っていたふきんを彼の顔に押し付ける。押し付けた後でそれが台拭きだったと気付いたが、後の祭りであった。一方、綾子さんと安原君はイイ笑顔を浮かべてわくわくしている。弄られる予感しかしない。やめてくれ。そしてリドル、お前はむしろ何か反応を見せてくれ。どうして平然としている。
俺の心情など知る由もないというより気にしていない***は、真顔で俺を説得しようとする。
「俺とお前が結婚したら、お前は俺の扶養家族になるだろ? そうすれば大手を振って養ってやれる。一ヶ所に住めば経済的だし、お前の安全がいつも確認できる。稼ぎは気にするな。大学辞めてでもお前のことは俺が養う」
「言ってることは男前で合理的だけど、お前が口説いているのは野ろ……」
野郎だろ、と続けようとして口を噤む。ここは他人の目がある事務所である。俺が男であることを仄めかすような不用意な発言はできない。
「……ええと、お前にそこまで心配されるほど自分の人生は終わってません。あと大学は卒業しろ」
「千葉と東京は遠すぎる。近くがいい」
「隣だろ。電車で余裕で日帰りできる距離だろ」
しかもお前、既に定期買ってただろ。
すると、我慢し切れなかったのか、ニヤニヤした綾子さんが口を挟んだ。
「ねえあんたたち。やっぱり付き合ってるのよね?」
俺と***は同時に首を横に振る。
「付き合ってません」
「ただの親友」
「あんたらの関係って何なの」
だから親友だってば。
***は不満げな顔をして俺を見た。
「やっぱり転学する」
「素直に今の大学行っとけ。正当な転学理由なんてないだろ」
「××……麻衣が東京にいる」
「はい不当」
そんな転学理由があってたまるか。恋人を追いかけて上京する男じゃないんだぞ、お前。
俺が呆れ果てる一方、ぼーさんと綾子さん、安原君が顔を寄せ合ってひそひそと話していた。
「おにーさん、これは痴話喧嘩にしか聞こえないんだけどなぁ」
「あの辺の距離感って本当に謎よね」
「SPR七不思議の一つと言われるだけありますね」
おい安原君。いつの間に俺と***の関係が七不思議に認定されたんだ。綾子さんも不思議に思ったらしく、安原君に尋ねた。
「そんな話があるの?」
「今作りました」
……安原君の会話に俺はついていけないようだ。
安原君が軽やかにホラを吹いている傍らで、***は少し情けない表情になった。
「もしかして俺よりリドルの方がいいのか?」
「どっちも嫌だという真実」
お前、男じゃん。俺も男じゃん。リドルも男じゃん。前提から既に無理だよな、結婚。そんな話が浮上すること自体がおかしいよな。
すると、今まで黙って茶を啜っていたリドルが口を挟んだ。
「別に僕でもいいけど、国際結婚って手続きが面倒そうだよね」
どうして結婚を否定しなかった。俺はもうイレギュラーズの顔が見られない。絶対に俺を弄りたそうな顔をしているに決まっている。
「そうじゃないだろ。頼むからもっと強く否定してくれないか。おぞましい予感で風邪引きそうだ」
「温めてあげようか?」
「きもちがわるい」
それはもう心底。俺とリドルの雑なやり取りを見た綾子さんは、顎に手をやりながら尋ねてきた。
「実はそっちが付き合ってたの?」
「まさか。自分が逆立ちで渋谷マラソンする方が可能性高いですね」
やれと言われてもやらないが。
俺の言葉を不思議に思ったらしい安原君が首を傾げた。
「逆立ち、得意なんですか?」
「10秒もたない」
「やる気ねえな!」
ぼーさんがすかさず突っ込んできたが、それは仕方がない。逆立ちも野郎との結婚もやる気がないのだから。
* * *
兄さんがノンケすぎて話が進まない(真顔)
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