ゾル兄さんで挑戦
萌え 2013/06/18 06:34
「ルイちゃん!」
「ひぃっ」
唐突に聞き覚えのある声で呼びかけられ、俺は思わず飛び上がった。ついつい素っ頓狂な声になりつつそちらに振り向くと、やはり想像通りの人物が立っている。俺よりも遥かに高い身長に大きい横幅。隆々とした筋肉に覆われた体は、黒い執事服をはちきれんばかりにしている。プロの水泳選手も真っ青な逆三角形の体躯の持ち主は、実のところ老婆である。キャラメイクを間違ったのではないかと言いたくなるような、鷲鼻に丸メガネを掛けた老婆の顔が、ムキムキの体の上に乗っているのだ。高い位置で2つに分けた髪を三つ編みにしたスタイルは、ジブリっぽいヒロインを思わせるが、彼女の場合はヒロインと書いて物理系魔女と読ませるタイプである。そう、物理系魔女である。大事なことなので2回言ってみた。
そんな彼女の名前はツボネ。俺が子どもの頃からゾルディック家に仕えていた古参の執事である。俺は彼女に頭が上がらないし、そもそも彼女に頭が上がる人間はほとんど存在しない。いい加減に“ちゃん”付け呼びをやめてくれと再三にわたって伝えてもなおやめてくれなくても、何となく強く文句を言えない。俺と1歳しか違わないイルミは様付けなのに、どうしてこうなった。
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