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にゃんにゃんにゃんの日
萌え 2016/02/22 22:30


・刀剣乱舞で審神者ゾル兄さん
・本丸でごろごろしている話
・やまなしおちなしいみなし





 い草の良い香りがする畳の上でだらしなく寝転がると、いそいそと白い子虎が1体、俺の腹の上によじ登ってきた。そのまま俺の腹に懐いているので、毛玉に優しく手を添えてモフる。すると可愛らしく「ぴゃー」と鳴いたので、俺は思わず破顔してさらに撫で回した。ふむ、これが世に言う“殺人毛玉”の威力なのか。

「殺刃毛玉……」

 俺の隣で胡坐を掻いた打刀の大倶利伽羅(おおくりから)が、そんなことをぼそっと呟く。内番着のジャージ姿で2体の子虎を撫で回す姿は、完全にその辺りにいそうな高校生である。余談だが、大倶利伽羅の首筋を覆う長さの栗色の髪に鋭く端正なつくりの顔は、褐色の肌ということ以外が俺の親友にそっくりだ。おまけに寡黙な部分も似ているので、彼に対しては変に気を許しそうになるのが困る。しかしながら、案外ズケズケと物を言う親友に対して、大倶利伽羅は謙虚であり真の意味で寡黙だ。そんな彼に対して俺が抱くイメージは、“雨の日に捨てられた子猫を拾っちゃう系の見た目不良刀剣男士”である。……今も無表情だが、子虎を撫でる手つきが優しい時点でお察しなのだ。

「あの……僕、どうしてここに呼ばれたんですか?」

 俺と大倶利伽羅が遠慮なく子虎を愛でていると、2体の子虎にまとわりつかれた飼い主――短刀の五虎退(ごこたい)が眉を八の字にした。所在なさげに正座する少年の姿は、真っ白な髪と相まってしょんぼりとした子虎のようだ。

 俺が五虎退に理由を説明しようと口を開きかけたその時、廊下から静かな足音が聞こえてきた。足音の主は俺に断ってからすっと入室する。

「失礼致します、主。主が御所望されていたキャットタワーが届きましたのでお持ちしました」

 やってきたのは俺の近侍を勤めている打刀のへし切長谷部だ。紫色のカソックに身を包んだ彼は、細身の肢体に似合わず軽々と持ち運んできた大きなキャットタワーをその場に置いた。俺は体を起こしてからへし切長谷部に礼を言うと、にっこりとして五虎退に説明した。

「こた君、この前22回目の誉れを取っただろ? だから記念にプレゼントしようと思ったんだ」

「わあっ! 主様、これ、本当にもらってもいいんですか!?」

 五虎退がパアッと顔を輝かせる。そんな少年を横目に見ながら、へし切長谷部が大倶利伽羅に声をかけた。

「それと、お前が個人的に注文していた猫のおもちゃセットが届いた。後で光忠(みつただ)が持ってくるはずだ」

 すると大倶利伽羅がぴくりと肩をはねさせた。どうやら、彼も猫グッズを購入していたらしい。十中八九、五虎退の虎たちに使うのだろう。五虎退は満面の笑顔で俺と大倶利伽羅にお礼を言った。

 ――そんな時だった。遠くからドスドスと騒がしい足音が響き渡り、聞き覚えのある声が俺を呼んだ。

「ぬぅぅぅしぃぃぃさぁぁぁまぁぁぁ!!」

「主どの! あるじどのぉぉぉっ!!」

 すぱーんと小気味の良い音を立て、太刀の小狐丸(こぎつねまる)が障子を開く。その背後から、ひょこっと打刀の鳴狐(なきぎつね)がお供の狐と共に顔を出した。ちなみに叫んでいたのは小狐丸とお供の狐である。ぬしさまぬしさまと懐いてくる小狐丸はともかく、鳴狐まで俺に突撃してくるのは珍しいことだ。すると、へし切長谷部がこめかみに青筋を浮かべて叫んだ。

「うるさいぞ貴様ら! 主の御前で騒がしい!」

 ここに打刀の加州清光(かしゅうきよみつ)がいれば、「ていうか長谷部もうるさいんだけど」と火に油を注ぐ発言をしていたに違いない。しかし、この場には良くも悪くもへし切長谷部の言葉をまともに受け止められる相手がいなかった。小狐丸はへし切長谷部の言葉をさらりと無視し、憤慨した様子で真っ白な長い髪を振り乱す。

「ぬしさま! 11月1日は何もしてくださらなかったというのに、どうして2月22日はそやつを愛でるのですか!?」

「猫の日だから」

「ならば犬の日も祝ってくだされ!」

 ぷんすか怒る小狐丸に、鳴狐(の本体である青年)はこっくりと首を傾げた。どうやら彼らも“ずるい”と言いにきたらしいが、小狐丸のセリフが予想外だったらしい。

「わたくしめと鳴狐は、犬の日に主どのと光忠どのからとっておきの油揚げをいただきました!」

「おいしかった」

 お供の狐に続き、鳴狐がどこかぽやんとした様子で頷く。それを聞いた小狐丸は、愕然とした様子で膝をついた。

「何ゆえ……何ゆえ、小狐めに何もしてくださらなかったのですか。ぬしさまは小狐がお嫌いですか?」

「嫌いなわけないだろ。単純にその日はこんのすけとお供の狐にプレゼントしただけだし」

 犬の日はイヌ科の動物を可愛がっただけである。鳴狐にも油揚げがわたったのは、単純にその場にいた飼い主だからだ。俺は小狐丸をでかい平安男と捉えており、お狐様とは思っていなかった。今後はそういう扱いをした方がいいだろうか。それを説明しても小狐丸はしょんぼりしていたので、さすがに可哀想になった俺は彼の頭を乱暴に撫でた。でかい図体の男の頭を撫でると俺は微妙な心境になるが、ワンコ属性の男は嬉しそうだ。

「分かった分かった。それじゃあ、後で髪を梳いてやるからそれで許してくれ」

「本当ですか! 約束ですよ、ぬしさま!」



***



という何の意味もない話。
小狐丸は多分、ちびっ子の姿だったらもっと可愛がってもらえたかと。成人男性の姿だからな……女性は萌えても兄さんは萌えない。可愛がれと言われても普通に難しい。
猫の日尊い。



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