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ルク兄さんとアッシュ
萌え 2013/08/26 22:35


(アクゼリュスで共同戦線)

・ルク兄さんとアッシュのコンビがアクゼリュスのセフィロトに来たところ
・ヴァンとイオンがパッセージリングの前で何かしてる
・ルク兄さんとアッシュに共闘させたいがためにこじつけ展開
・ローレライ様の奇跡なんて起きない





 セフィロトは中央が巨大な吹き抜けとなっており、その空間を穿つように巨大な音叉状の譜業が設置されている。それがパッセージリングとやらなのだろう。俺達の居る入り口は天井付近で、すり鉢のような形をしている部屋の壁に張り付くような、一本道の螺旋状のスロープが下へと続いている。スロープはすり鉢の底に繋がっているが、突き立つパッセージリングの周辺だけは円形に床が刳り抜かれ、果てしない地の底へ繋がっていた。地の底は肉眼ではうかがい知れないが、恐らくそこに充満している光の粒・記憶粒子(セルパーティクル)だか何だかのお陰で明るい。一見すると不気味なサイバー空間だった。

 ヴァンとイオンは、すり鉢の底に立っていた。イオンはどこか足取りが覚束ない。そんな彼を連れているヴァンは、気配に気づいたのかこちらを見上げ――驚いたように身じろいだ。

「あれが大地を支える装置ってわけか。創世歴時代は何でもありだな」

 俺はヴァンから視線を外さないまま、疲れた溜息をついた。アッシュの言によると、パッセージリングという装置はこの世界に6つ存在し、大地を支えているらしい。ヴァンはその装置を破壊しようと画策しているというが……その目的がまだ分からない。ともかく、このパッセージリングがあるセフィロトという部屋の鍵を開くにはイオンの力が必要で、パッセージリングを破壊するには俺の超振動が必要らしい。だからヴァンは1人でここに来るよう俺にメッセージを残した。

 俺の隣に居たアッシュは目を眇め、手にしていた抜き身の両刃剣を持ち直した。

「アレをぶち壊そうとしているヴァンも大概だがな。――俺の話を信じたのなら、黙って見ていろ。ヴァンの狙いはお前だ」

「違うだろ。あれを壊す方法が超振動だとすれば、それが使えるお前だって可能性がある」

「それこそ違うんだよ」

 アッシュは寄って来た蝙蝠の魔物を一刀で伏すと、横目でちらりと俺を一瞥した。

「奴は預言(スコア)を覆そうとしている。だから預言に詠まれていないレプリカ(お前)で壊す必要がある」

「……面倒臭いおっさんだな。そもそも壊さなければ良いじゃんか」

「全くだ」

 俺は右腕を持ち上げ、大振りの譜銃を構えた。引き金を引くと真っ白な譜弾が放たれ、別の蝙蝠の頭を砕く。

「どうせお前1人じゃ大した足止めにもならないだろ。どの道、もう少しすれば他の連中がここに追い付くはずだ。それまで付き合うよ」

 俺の言葉にアッシュは舌打ちしたが、拒否はしなかった。彼はわらわらと寄ってくる魔物を黙って斬り伏せる。魔物自体は大したことがないのだが、こうも寄って来られるときりがない。どうせヴァンと対峙するのなら、狭い通路よりも広い空間のほうが位置取りしやすい。ならばこの通路で時間稼ぎと称してヴァンを待つよりも、こちらから最深部に向かって広間で奴と対峙した方が良いだろう。それに、俺達がヴァンと距離を取っている間に、彼がパッセージリングに致命的な何かを仕出かさないとも限らないのだ。そうなった場合、この位置ではほぼ手が出せない。そう考えた俺は、アッシュに強行突破を提案した。

「アッシュ、駆け抜けろ。俺が援護する」

「――上等だ。雑魚はてめえが掃除しろ!」

 迷いはなかった。アッシュはすぐに駆け出し、俺もそれに追従した。

 走る、走る、走る。アッシュが自身の正面に居る魔物だけを斬り伏せながら、風のように駆け抜ける。俺は後方から、側方からアッシュに襲いかかる魔物を狙い撃ち、仕留めて行く。リグレット先生から真面目に銃を習っていて良かった。走りながらでも上手く銃弾を命中させられるのは、彼女の教えなくしてはありえなかっただろう。

 程なくして俺達はセフィロトの底に辿り着いた。制御盤か何かだろうか、腰の丈ほどの柱の前に立っていたヴァンは、表情を強ばらせて俺達を出迎えた。

「お前達……何故並び立っている!? アッシュ、ソレは」

「うるせえ! てめえのやり方は気に食わねえんだよ!」

 皆まで言わせず、アッシュがヴァンを怒鳴りつける。要するにレプリカよりお前の方がムカつくからぶった斬るということか。分かりやすいがチンピラかお前は。それで大丈夫か公爵子息(本物)。

 ヴァンは顔を歪めると、脇に所在なさげに立っていたイオンを片手で掴んで引き寄せた。そして抜いた剣の刃を少年の細い首に宛がう。

「……導師を傷つけたくないのならば、大人しくするのだな」

「ヴァン、てめえっ!」

 元々キレやすいアッシュが激高するが、俺はすぐにヴァンの目論見を潰す言葉を吐いた。

「アッシュ、構うな。ヴァンはイオンを傷つけられない」

 ヴァンが鋭い目つきで俺を睨んだが、そんなものに怯んでいるようでは、狸爺や狐婆が跋扈する宮廷でやっていけないのである。多少なりとも、妖怪共の生態に触れてきた俺にとっては、怯えるに足るものではない。

「そうでもなければ、ルグニカ平野でわざわざマルクト軍を相手取って、強引にタルタロスからイオンを引っ張り出したりしないはずだ。大方あの時、あの付近にあったセフィロトにイオンを連れ込んで、扉を解錠させたんだろう?」

 セフィロトの件ははったり混じりの推測だったが、図星だったらしい。ヴァンは苛立たしげに舌打ちし、イオンを脇に乱暴に放り出すと、大剣を正眼に構え直した。アッシュも再び剣を構え直すと、正面からヴァンに突進した。

「ヴァン、死ねえええええっ!!」

 師弟が斬り結ぶ。剣の腕が達人級である2人の斬り合いに、俺が口を挟むことなどできない。だから俺はアッシュが離れた瞬間を狙い、ヴァンを銃撃する。ヴァンは寸前で気付いて譜弾を剣で弾く。その隙をさらに狙ってアッシュが斬り込む。あれ、俺とアッシュって、意外と良いコンビなんじゃないか?

 しかし2人がかりでも俺達とヴァンの力の差が歴然としていたため、なかなか決着がつかない。俺は命中しやすい体幹を狙って撃っているが、必ず避けられるか防がれる。アッシュの剣も然り。あれなんていうチート。だが勝負がつかないからと下手に距離を取れば、すぐさま譜術で狙い撃ちにされるだろう。ヴァンは優秀な譜術剣士なのだから。それを防ぐために俺もアッシュも絶え間なく攻撃しているのだ。ああもう、アッシュをいなしながら剣で銃に勝つってお前はどこの剣士だ。俺は次元の足元にも及ばないのでなおさら勝負にならないですよね。俺ができることは、アッシュがヴァンに傷を付けられるよう、ちまちまとした嫌がらせという名の銃撃を仕掛けるくらいか。……ヴァンはアッシュではなく俺を利用するつもりだったらしいし、アッシュを殺すわけにはいかないが故に手を抜いているのだろう。だからこれほど実力差があっても、あたかも拮抗しているかのように見える。俺が前衛でアッシュが後衛だったら、とっくに俺は(死なない程度に)斬られていたに違いない。

 ええい、援護はまだか。早く来ないと眼鏡に指紋付けるぞ鬼畜死霊使い!



***



ヴァンがイオンを殺せない理由:セフィロトの鍵を開けさせるため。イオンレプリカの予備にフローリアンがいるが、レプリカは性能が安定しないため、イオンレプリカを容易に殺すと後々セフィロトの鍵が開けられなくなる可能性がある。

内心でジェイドを呼ぶルク兄さん:護衛とは何だったのか。ガイェ……。



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