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ルク兄さんと親善大使派遣
萌え 2012/09/30 09:33


・ルク兄さんがキムラスカでアクゼリュスへの親善大使派遣を命じられたシーン
・何故かルク兄さんがヴァン師匠大好きって誤解されてる
・モースは安定のモース
・ルク兄さんとナタリアは健全な友情を育んでいる
・ルク兄さんの周りには一応パーティメンバーがいる





 アクゼリュスはキムラスカ・マルクト両国が領有権を主張している土地であり、現在はマルクトが実効支配している。アクゼリュスはオールドラント最大規模の鉱山都市であるため、譜業国家であるキムラスカにとっては、喉から手が出るほど欲しい土地だ。アクゼリュスに首を突っ込む契機となるこの案件に、キムラスカが手を出さないはずがない。

 だが、そのために派遣する親善大使に、次期国王とも目されているルーク・フォン・ファブレ(俺)を指名する理由が分からない。通常ならばそれだけキムラスカが本気であることを見せる手段として理解できるが、件のアクゼリュスは瘴気と呼ばれる所謂毒ガスが蔓延する危険地帯だ。そんな場所にわざわざ貴人を派遣するのは些か妙である。派遣される側のマルクトも、下手に死んでもらっては非常に困る相手をよこされても扱いに難儀するだろう。

 ……まあそれも、俺以外に有力な次期国王候補がいるのならば、要するに俺を捨て駒として使えるのならば採り得る手段の1つである。マルクトの地(アクゼリュスは微妙だが、マルクト人相手の親善大使派遣なのでそう言おう)でキムラスカの王族が害されれば、それは戦争の引き金になる。しかも、キムラスカ側に戦争の大義名分を掲げやすい。

 だが現実は、俺以外に有力視される次期国王候補は居ない。ナタリアはキムラスカ王族の貴色を持たない姫であるし、ファブレ公爵は国王についてもおかしくない立場であるが、公爵家を継がせる後継者が居ない。あとは現国王が新しい妻を娶るか、ファブレ公爵とシュザンヌ様で夜の運動会を頑張って後継者を作るくらいしか手段がないが、それで生まれる後継者は幼すぎる。何より、赤毛と緑目という貴色を守るために近親婚を繰り返してきた結果、キムラスカ王家の出生率は低い。現実的ではないだろう。

「……ひとつ、よろしいでしょうか」

 俺は玉座の王を見上げて尋ねた。

「何故、私を任命されたのかお尋ねしても?」

 キムラスカ王は顎をひと撫ですると、威厳の篭った眼差しで俺を見下ろした。

「ヴァンが共犯であるかどうか、我々もはかりかねている。そこで、だ。お前が親善大使としてアクゼリュスへ行ってくれれば、ヴァンを開放し協力させようと考えておる」

(……はぁ?)

 残念、威厳があるのは眼差しだけだったらしい。俺が引き受けるのを渋ったと思ったのか、俺を餌で釣るような回答が返ってきた。いやいや王様、俺別にあのおっさんのことは何とも思っていませんが。餌が餌になってません。

 俺のグランツ謡将への心象を知ってるナタリアは、王の隣に腰掛けたまま言葉を濁すように補足した。

「彼は城の地下に捕らえられて居ますわ」

「左様でございますか」

 真面目な顔の下でとってもどうでもいいです、と考えている俺の内心を読み取ったらしいナタリアは、こっそりと生ぬるい視線を俺に向け、次いで自身の父親にも向けた。お疲れ様です王女様。

 すると何を考えたのか、俺の後方に突っ立っていたジェイドが勝手に口を開いた。

「大好きな師匠を助けるためですよ、ルーク」

(え……俺、あのおっさんのこと好きじゃないけど。つーか王の前で馴れ馴れしいんだよこの眼鏡)

 王族の前で無礼千万のジェイドを内心でフルボッコにしつつ(実際にやろうとしたら多分負けるので心の中のみ)、俺は何とか頑張って彼をスルーした。主にマルクトにおける変人達との壮大な帰宅劇は、確実に俺のスルースキルを向上させていた。そんなスキルが向上する生活なんてしたくなかった。

「……叔父上。何故、私の親善大使派遣とグランツ謡将の恩赦が繋がるのですか」

 もう1度分かりやすく問い直すと、インゴベルト王は一瞬だけ意外そうな顔をした。だから俺は、貴方が考えるほどグランツ謡将のことを好きではありません。

「グランツ兄妹がファブレ家で騒動を起こしたことは紛れもない事実。あの兄妹を拘束して真実を追求し、咎人に罰を与えなければ、ファブレ家及びキムラスカ王家の権威が失墜します。真相を詳らか(つまびらか)にしないばかりか、容疑者に恩赦を与えるなどとんでもない」

 この場には何故かティアが居たりするのだが(いや理由は何となく察している)、俺は平然とそう言い切った。ジェイドの無礼を見習って、元々無鉄砲のきらいがある彼女も何やら文句を言い出すだろうかとふと思ったが、実際に文句を言い出したのは彼女の直属の上司だった。そう、王の傍に控えている(ナタリアほど王と近くはないが)モースという男である。ビア樽のような体型をした彼はダアトの大詠師、実質的なナンバー2である。本来ならば自治区の宗教家であるモースが王の傍に控えるなど有り得ないと言いたいのだが、この国は、というかこの世界はよく当たる預言があるせいで、政教分離が出来上がっていない。

 モースは、口角泡を飛ばしながら俺に向けて叫んだ。

「何を馬鹿なことを! ティア・グランツとヴァン・グランツは、此度の親善大使派遣の随伴員だ。それを何という扱いをする!?」

(なにそれバッカじゃねえの)

 何となく予想はしていたが、ダアト(とうちの国の王様)は、ファブレ公爵家に侵入した挙句に暴れ回ったティアとその原因である兄を、あろうことか(名目上は非常に名誉である)親善大使派遣の随伴員として採用するつもりらしい。おいそれなんて罰ゲーム。何が悲しくて犯罪者を連れて他所の国に仕事しに行かなければならないのか。やめろよそいつらが何か問題を起こしたら、大使である俺の責任になるじゃないか。マジでやめろ勘弁してくれストレス源を増やすんじゃない。助けてナタリア。王の横で呆れた顔するくらいならお父様に何か言ってやって下さい。いや、この場では無理があるのは分かるけれど。

「なるほど。これでダアトの意向が判明致しましたね」

 俺は努めて冷静に、そして大真面目な顔を作って国王を見上げた。表現するならば「大義は我にあり」的な顔だ。どんな顔だそれ。とりあえずイケメンの真面目なドヤ顔である。

「モース殿はキムラスカ王国の第三王位継承者に対して、陛下の御前で不躾にも怒鳴り散らし、己の意見を強引に貫こうとされた。これは宗教自治区ダアトによるキムラスカ王国への内政干渉としか言い表しようがありません」

「私の発言は偉大なる預言に基づくもの! 王位継承者と言えども、そのように軽率な扱いは許されんぞ!」

「ならばその預言が刻まれた譜石を、今すぐにここに持ってくるべきでしょう」

「なっ……」

 なおも図々しく反論をするモースに俺があっさりと返すと、予想外の答えだったのかモースが言葉に窮した。

「陛下に対して身分をわきまえずに意見し、私に対して不躾にも怒鳴り散らし、犯罪者を放逐し、キムラスカ王家とそれに連なる公爵家に泥を塗らんとする行為を是とする預言が刻まれた譜石、王の御前にお持ちください。譜石が確認できましたら、個人的にではありますが謝罪致しましょう」

(ほれ、あるなら持ってこいよ。だが今すぐじゃないと認めん。誰が偽装工作の猶予を与えてやるか)

 恐らくモースは調子に乗っている。預言があるから王はモースの言葉に耳を傾けているのであって、それがなければ取るに足りない存在であるという自覚がモースには欠けている。だからこそあのでかい態度が取れるのだ。この様子だと、俺が要求した譜石など存在していないだろう。ざまあ。枕を涙で濡らすが良い。

 さて、モースをどん底に突き落としたところでどうフォロー(という名の追い込み)をしてこの場を取り繕うかと考えを巡らせていると、またしても俺の背後から声が聞こえた。

「ルーク様、素敵ぃ……」

 アニスだった。ぼそっと小声で呟かれたのだが、近い位置にいる人間にはばっちり聞こえている。お嬢さんはそんなにモースが嫌いですかそうですか。

(おーい、聞こえてるぞ自重しろー)

 礼儀作法に自信がないなら謁見の間から出ていた方が良いのではないだろうか、主に俺の後方に突っ立っている人々は。





 以前書いたか覚えてないので書きますが、ルク兄さんとナタリアは紆余曲折あるものの、「記憶ないんだし友だちとしていちから付きあおうよ」的な感じになってます。ルク兄さんが右手中指につけていた指輪は友情の証で、ナタリアもつけてます。どちらも緑のエメラルドで、ルークが銀でナタリアが金の指輪です。

 ルク兄さんに引き摺られてナタリアも原作よりは精神的に落ち着いているので、対応がおとなしめです。おてんば姫なのは変わりませんが。

 これだとルク兄さん+ナタリア→←アッシュという関係が出来上がるんですかね。アッシュフィルターだとルク兄さん×ナタリア←アッシュになってそうだこれ。ルク兄さんが嫉妬で斬られるぞ。



 だがコメでもらったガイ→ルク兄さんという兄さん的に迷惑過ぎるCPも気になる自分がいや黙ります。



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