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ゾル兄さんが大好きなルーク
萌え 2012/10/01 23:47


・ゾル兄さんin TOA
・バチカルまでゾル兄さんがルークを送り届けた後
・ファブレ公爵から報酬をもらって屋敷から出るところ
・ルークがゾル兄さん大好き





 荘厳な作りの王城のすぐ傍、王家に連なる高貴な血筋のファブレ公爵が住まう屋敷のエントランスホールで、俺は困っていた。

「嫌だ!」

 ルークが帰り際の俺の腰にしがみつき、子どものように駄々をこねているのだ。若君のご乱心に、周囲の執事やメイド、白光騎士団達も俺と同じく手を出しあぐねている。仮にもルークは次期国王と目される高貴な身分の人間だ。下手に手を触れることすら不敬に値する。……現時点でその本人にしがみつかれている俺は、不敬候補から除外していただきたい。

「どうせルイは自分の村の場所が分かんねえんだろ? だったら俺ん家に居ればいいじゃねえか!」

 すいませんそれ嘘です、とは言えるわけもなく。彼を振りほどくわけにも行かない俺はため息をこらえた。どうして俺はこんなに彼に懐かれたのだろうか。ルークをべたべたに甘やかしたつもりはないのだが。

「ルイはすっげー強いんだから、俺の家で雇ってもらえばいいじゃん!」

 ルークの言葉に、周囲の白光騎士団達がざわめく。うわルークそれやめて。そのセリフは白光騎士団のプライドを刺激するからやめて。得体のしれない傭兵(仮)の俺の方が、誇り高い白光騎士団より強いぜ!とか言ってるように聞こえるからマジでやめて。

「……ルーク様。私のような得体のしれない傭兵風情を、高貴なファブレ公爵邸に召し上げるのはあまりにも分不相応です」

 俺がそう言うと、ルークは不満そうな顔で俺を見上げた。

「ルイは得体が知れなくねえよ。俺のことをずっと守ってくれたし、ずっと味方してくれただろ」

「それが、貴方に取り入るための演技だとしたら?」

「え……」

 俺のセリフが予想外だったのか、ルークはぽかんと呆けた顔をした。

「ルーク様。傭兵と騎士の違いが分かりますか?」

「……傭兵が、色んな奴から仕事を引き受けて、騎士が誰か1人からだけしか仕事を引き受けない?」

「ええ、そうですね。極論を申し上げるならば、騎士は主に忠誠を誓い、傭兵は金に忠誠を誓うといったところでしょう」

 それが全てではありませんがと付け足し、俺は更に続けた。

「さて、もし“傭兵”の私がファブレ公爵邸で貴方の護衛として務めたとします。その間、貴方の命を狙う人間に“ファブレ家の倍額を出すから、屋敷に侵入する手引きをしろ”と持ちかけられた場合……どうなると思いますか?」

「そんなの、ルイは突っぱねるだろ」

 ルークは即答した。それは嬉しいが、今の問いとしてはハズレだ。

「“傭兵”はその手引きを引き受けますよ。金が手に入りますから。金が目当てで働くのですから、金さえ支払われれば、その支払相手は誰だって良いのです」

 傭兵は金を出す依頼主につく。当然、危険度や諸々との兼ね合いはあるが、概ねそうだろう。まあ、ゾルディック家は先約制なので、それは当てはまらないのだが。

「……でも、ルイはそんなことしない」

「もし、私が貴方と出会う前に、貴方に取り入れと誰かに依頼されていたらどうします?」

 悔しげに食い下がるルークは、俺の止めの一言に閉口した。口をへの字に曲げて黙りこむ彼がさすがに可哀想になったので、俺は「冗談ですよ」と笑ってみせた。

「お言葉は嬉しいですが、少々不用意ですよ。私のような男を、屋敷に引き入れてはいけません。貴方を守る騎士は既に控えているのですから、私は必要ありません」

 俺はさらっと白光騎士団の株を持ち上げつつ、ルークの申し出を断った。ルークの手は先程の問答で俺から離れている。さて帰るか、と安堵した俺がルークから体を離そうとしたその時、ルークが突然顔を上げて叫んだ。

「――違うっ! 俺は護衛が欲しくて言ってるんじゃねえ!」

 多分そうだろうなとは思ったがスルーさせてくれ。ルークに付き合ってバチカルに拘束されてしまっては、ハンター世界に帰るのが遅れるかもしれない。そう思ったが、次のルークの言葉に俺はぴしりと固まった。

「俺はルイと離れたくない!」

 あらまあストレート。そして再び彼にタックルされた。俺を引き止めるためとはいえ、必死過ぎないだろうか。今度はどうやってなだめようかと、ひとまず俺はルークの両肩に手を置こうとした。

 しかし俺の手が触れる前に、応接間に繋がる扉から、相変わらず険しい顔をした(これが彼の標準らしい)ファブレ公爵が現れた。俺は思わず両手を上げ、“僕痴漢やってませんポーズ”を取ってしまう。なんだろうか、この居心地の悪さは。ていうか、先程から応接間の扉にぴったりと張り付いていた気配はファブレ公爵だったのか。ということは、一連の会話は全部聞かれていたとみて間違いない。……俺、もう逃げていいかな。





 多分このルーク、ゾル兄さんがこういうちょっと嫌なこともちゃんと教えてくれるから懐いてるんじゃないかなという気がしてきた。馬鹿にもしないし。



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